第25話 恋乃ちゃんへの連絡

 俺は家に帰った後、また悩んでいた。


 もう午後十時半すぎ。


 食欲もあまりなく、晩ご飯はあまり食べることはできなかった、


 今も気分はあまり良くない。


 祐七郎と話をしていた時は、


 恋乃ちゃんに今週中に告白する


 と決意していたのだけど。


 しかし、恋乃ちゃんが俺の告白を断ってしまったら……。


 どうしてもそのことが心の中を占めてしまう。


 祐七郎は、


「断られたっていいじゃないか。お前の想いが本物だったら、何度でもアプローチすればいい」


 と言っていた。


 それはその通りだと思う。


 しかし、俺は、祐七郎ほど心は強くはない。


 とはいえ、こんな安定しない心の状態のまま、数日をすごすのは、とてもつらいことだ。


 こんな状態を続けるくらいなら、もう明日告白すべきだろう。


 俺は恋乃ちゃんにルインを送ることにした。


 まだ送信をするのは緊張するが、これからもっと緊張することをしなくてはならない。


「こんにちは」


 すると、恋乃ちゃんはすぐに、


「こんにちは」


 と返信してきた。


 恋乃ちゃんの方も、俺とのやり取りに慣れてきたようだ。


 これからが本番。


 俺は一瞬、書こうか書くまいか迷った。


 しかし、こんなところで立ち止まってはいけない。


「明日、放課後、大切な話があるんだけど。またグラウンドの端まで来てほしい」


 一挙にそう書き、送信した。


 恋乃ちゃんは、いきなりこういう言葉が送信されてきて困惑しないだろうか、と思った。


 しかし、今日何もしなかったら、明日は余計に悩んでいたと思う。


 俺は返信を待った。


 すぐには来ない。

 

 既読はついたのだが、五分経っても返事がこない。

 

 恋乃ちゃんを困惑させてしまったのだろうか、と思う。

 

 面と向かってならまだしも、言葉で、


「話があるんだけど」


 と送信したのだ。もしかすると、失礼な人と思ったかもしれない。


 幼馴染だといっても、今の俺達はそれほど仲の良い状態ではない。


 失礼な人と思われても仕方がないのかもしれない。


 そうすると返事は期待薄だけど……。


 少しあきらめ始めたところに、既読がついた。


 そして、


「うん。わかった。この間のところね」


 と返信されてきた。


 俺はホッとした。


「そうだよ。ありがとう」


「放課後になったら、すぐってことでいい?」


 恋乃ちゃんが送信してくる。


「うん。それでいいよ」


「大切な話なんだね」


「そうなんだよ。直接恋乃ちゃんに話をしなければならない大切なことなんだ」


「それは……。康夢ちゃんとわたしのこれからのことなの?」


「そう思ってくれていいと思う」


 しばらくの間、恋乃ちゃんの送信が途切れる。


 また恋乃ちゃんを困惑させてしまったのだろうか。


 そういうつもりはない。


 しかし、結果的にはそうなっている気がする。


 俺の話の進め方があまり良くないのではないだろうか。


 でも大切な話を明日しなければならないのだ。それは伝えておかなくてはいけない。


 やがて返信がきた。


「大切な話……。どんな話かわからないけど、わたし、きちんと受け止めたいと思う」


「ありがとう」


 これでなんとか明日、会うことができるようになった。


 後はそこで告白できるかどうか。


「じゃあ明日、グラウンドの端で」


「うん。また明日」


「バイバイ」


「バイバイ」


 こうして、今日恋乃ちゃんとのやり取りは終わった。


 一挙に疲れが出てくる。


 しかし、まだまだこれから。


 明日告白をし、休日にデートをしなけれならない。


 先には大きな難関が待っている。


 それがうまくいかなければ、恋人どうしになることはできない。


 とにかく俺の恋乃ちゃんに対する熱い気持ちを伝えることだ。


 祐七郎も熱意が大切だと言っていた。


 俺はそう思っている内に、もう一つ大切なことがあると思った。


 それは、デートのことだ。


 告白自体うまくいくかどうかわからないのに、デートのことを考える必要があるのか、と思うが、この休日に行くとなると、今から情報を集め、準備をする必要がある。時間はあまりない。


 だんだん眠くなってきていたが、俺はネットで、少し情報を得ることにした。


 まず場所の選定から始まる。これが一番大きいところだろう。


 場所が決まったとしても、どういうルートで行くか、という問題がある。


 レストランに行くとしたら予約もしなければばらない。


 映画だったら、どういう映画を観るのがいいのか。


 概略だけでも今決めとく必要がある。


 デート自体をもっと後に延ばすという手はあるが、恋人どうしになれたら、もう後はどんどん仲良くなっていきたいという気持ちが強い。


 できればこの初デートでキスをしたいと思っている。


 とはいうものの、まだ告白していないのに、なんで準備をする必要があるのだ、という気持ちはどうしてもある。


 そして、告白してもし断られたら、今していることは全くの無駄になる。眠くなってきているのに、今日それをする必要があるのだろうか、という気持ちも大きい。


 しかし、俺は恋乃ちゃんと恋人どうしになりたい。いや、きっとなれるはず。それならば、出来ることは今しなければならない。


 俺は、ともすればマイナス方向になる気持ちと戦いながら、デートの概略を決めようと努力するのだった。

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