同級生と後輩に振られた俺。でも、その後、疎遠になっていた幼馴染とラブラブになっていく。俺を振った同級生と後輩が付き合いたいと言ってきても、間に合わない。恋、甘々、デレデレでラブラブな青春。
第5話 別れを切り出されたわたし (やいなサイド)
第5話 別れを切り出されたわたし (やいなサイド)
わたしは冬里やいな。高校一年生。
今わたしは、幸せの中にいる。
この十月から、陸上部のイケメンの先輩と付き合っている。
先輩はなんといってもかっこいい。
そして優しい。
今までいろいろな人に告白されたけど、どの人も彼にはかなわない。
いや、わたしのような子には、イケメンの先輩こそがふさわしい。
この間も夏島先輩に告白されたけど、イケメンの先輩にくらべたら雲泥の差。
それなのに告白をしてくるなんて。
もう二度と話をしたくないと思っている。
イケメン先輩との時間はたのしい。
デートをしていると、時間を忘れてしまうくらい楽しい。
そばにいるだけでも幸せ。
この幸せがずっと続くと思っていたんだけど……。
「もう別れよう」
十一月中旬。
冷たい雨が降ってきそうな日。
部活が終わった後、わたしはイケメンの先輩に、グラウンドの端に呼び出されていた。
「別れるって、どういうことなんですか?」
わたしは、先輩の言っている意味がわからなかった。
「言葉通りだよ。きみとは今日限り、これからは恋人でもなんでもない」
ど、どういうこと。わたしたち、まだ短い間だけど、今まで恋人どうしとして過ごしてきたじゃない。
「じょ、冗談で言っているんですよね。わたしを驚かせようと思って」
「冗談でこんなことを言えると思っているの?」
先輩は、冷たい笑いを浮かべる。
今まで見たことのない表情。
いつもは明るくて、優しい微笑みをわたしに投げかけてくれるのに。
「冗談ではないのね……」
「そう。もうこの瞬間から俺ときみはただの生徒どうしだ」
「ど、どうして……」
わたしの目からは涙が溢れ出してきた。
「わたし、先輩のことが大好きだったのに……。先輩にだったら、すべてを捧げることができたのに……」
先輩が求めれば、いつでも唇を重ね合わせようと思っていた。
抱きしめられることも夢見ていた。
それなのに、先輩はわたしの手を握ること以上はしてくれなかった。
こんなに好きだったのに……。
「一言で言おう。きみには魅力が全くない。話をしていてもつまらない。もう少しましだと思っていたんだだけどな。きみに告白をした俺が情けなかったんだ。もうきみのことはすべて忘れたい」
どうしてそういうことを言うんだろう。
デートの時だって、一生懸命お化粧をして、おしゃれをしたつもりだ。
精一杯先輩に気を使っていたつもりだったのに……。
何も通じてなかったということなの?
「まったくの時間の無駄だった。俺の大切な時間を返してほしいぐらいだ」
「そこまで言わなくても」
「いや、それでもまだ抑えて言っているほうだ。もっと厳しいことを言いたいくらい。とにかく、もうきみとはもう話すこともないと思う」
わたしは、全身から力が抜けるようだった。
きみとは、もう話すことはないだなんて……。
「俺はなんできみのような子を好きになってしまったんだと思っているよ。世の中には素敵な子が一杯いるというのに。俺はただの世間知らずだったんだな」
冷たく言い続ける先輩。
デートをしたこともある子に、なぜそこまで厳しいことを言うんだろう。
わたしは涙を流し始めた。
「きみは、俺とは釣り合わなかったんだ。いや、俺の恋人になるということがどういうことかわかっていなかったんだ。もっとおしゃれをして、面白い話題を提供すべきだったんだよ。その点、きみは何もできなかった」
「わたしは、わたしなりに努力したんだけど……」
涙声のわたし。
「努力? それが努力した姿なの? 俺からすると何もしていなかったようにしか思えない」
「こんなに好きだったのに。今だって好きな気持ちは変わらないのに……」
「好きだって? きみが俺のことを好きになるんだったら、せめてもう少しきれいになるんだな。まあもう遅いけどね」
そう言って、冷笑を浴びせる先輩。
でも、でも、わたしはまだあきらめたくない。
「先輩、もう一度、もう一度だけ思い直してください。今度こそ、今度こそ、先輩好みの女の子になりますから」
わたしは、涙を拭き、先輩に頭を下げる。
しかし……。
「何度言われても、きみと付き合う気はもうない」
「お願いです。わたしにチャンスを下さい」
「しつこい人だな」
「しつこいと言われようと何しようと、わたしは先輩の恋人のままでいたいんです」
「もう恋人でも何でもない」
「そんなこと言わないで……」
わたしはひたすら先輩に頭を下げ続ける。
「俺はきみのような子は嫌いだ。あまりにもしつこすぎる」
「先輩がわたしともう一度付き合う気になってくれるまでは、あきらめません」
「何を言っているんだ、きみは。しつこければしつこいほど嫌になるのがなんでわからないんだ」
「だって、ここで別れてしまったら、もう二度と先輩と話ができなくなる気がするんです」
「俺はもうきみには興味はないって言っているのに」
「わたしはなんと言われても先輩のことが好きなんです。先輩の為に尽くしていきます」
なんとしてでも、先輩はわたしの恋人のままでいてもらう。
「きみのことが嫌いだと言ってもあきらめないの?」
「あきらめません!」
わたしは力強く言った。
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