第10話 まだ、あるの。

 透析をしていて急に背中が痛み出した。

 透析をしている病院の整形を受診するも、「おそらく寝違えたのやろ」と痛み止めの注射とロキソニンを処方するのに留まった。

 痛い、すごく痛い。夜も眠られない。

 痛みに耐えかねて、またもや整形を受診したが、「寝違えはすぐには治らないよ」と冷たく言い放たれた。

 いつも結構我満強いほうだと思う。痛みの度合いを量る器械があればいいのに。

 医者はわかってくれない。

 次の透析中、痛みに耐えかねて、涙が勝手に溢れ出てきた。「透析で痛み止めが流れてしまうのかもしれへん。もう1錠ロキソニン飲んでおく?」看護師さんの優しい言葉も痛み止めも効かなかった。

 

 1週間ほどそんな日が続いた。

 人はこんなときどうするのやろ? 1人眠られないベッドの上で、暗闇に目を向けながら、ふと、不穏な考えが心を過ぎった。ない、それはない。だったら宗教に縋りつくのやろか。

 実家の父はある宗教にとてつもなく熱心だった。大きな仏壇に向かい題目をあげる父の後ろ姿が浮かんだ。子どもの頃から執拗に勧めてくる宗教を拒否したから罰が当たった? やめて、そんなんで罰を与えるやなんて、どんな神やのん。

 降り止まない雨はない。明日は晴れる。きっと晴れる。

 そうやって自分自身を励ましているうちに背中の痛みが薄れていった。


 これは運動不足があかんのや。何か運動をしなければと思いたちスポーツジムに通いだした。

  針穴から水が入るため透析の日はプールに入れないので、スタジオでヨガや気功を楽しんだ。

 ヨガで床に寝転ぶうち、ほんまに寝てしまった。

 車の免許を手放し、自転車も乗れなくなって、スポーツジムまで往復1時間の距離を歩いて行くので、それだけで充分運動は出来ていた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る