第3話 ぼうしの国の大事件


「てっいうか、ハッとして」


のところが、ぼうしの名前の


「ティコ、ハット」


と、合わさったみたいなんだ。



――へぇ~っ。それって、じゅもんみたい。


マユコが、細いマユゲを動かしながら、からかうように言いました。


――で、いついってきたの? ぼうしの国には。


――うん、そのあとすぐ。


キヨヒコが逃げだしたあと、ぼうしをひろいにいったんだ。それで、かぶったら……


……まさか、ぼうしの国へ、いっちゃったわけ。


そう言うと、キヨヒコがタコの口をしながら、首を横に二度ふりました。

ありえない時のキヨヒコの合図です。


――かぶったら、ぼうしの中にすいこまれて、まっくらで、長いトンネルを飛んでいく感じだった。で、気がついたら、小さな町みたいな所にいたんだ。


そこが、ぼうしの国だったんだ。

すぐに、ひとりの女のコのが、近づいてきた。


ティコだった。


ティコは、オレと同じくらいのこどもの女のコで、ぼうしの国の女王だ。


トシをきいてみたけど、そういうのないの、とか言ってた。不思議な女のコさ。

ティコは、オレにあいさつすると、国の中を案内してくれた。


なんだか、外国みたいな雰囲気だったなあ。家はみんな、ぼうしの形をしていた。

レンガ作りで、ダンロとエントツがあったから


――レンガって、あかレンガ?


――うん。


――エントツって、サンタクロースが、とおれる?


――うん、サンタも入れるような大きなやつだ。


ユウイチロウには、ときどき、キヨヒコが何を考えているのか、

わからなくなることが、ありました。


――空も野球のぼうしの形をしているんだ。

ぼうしの中に入って、見上げている感じ。広さは、東京ドームくらいかな。

とにかく、広いんだ。夜になると、星がいっぱい出て、きれいなんだけど、なんだか、プラネタリウムの中に、いるみたいな感じなんだ。


そう言いながら、ユウイチロウは、空を見上げました。


何だかぼうしの国のことを話しているユウイチロウは、楽しそうです。


ふいに、そんなユウイチロウ話の腰を、マユコがおりました。


――で、事件は、いつおこったの?


ユウイチロウは、はやくも、ぼうしの国の事件のことを、

話さなくてはならないようです。



〈続く〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る