第2話 ぼうしの名前
「それなら、ジャングルジムのうえで話すほうが、スリルまんてんだよ」
ユウイチロウは、そう言うと、キヨヒコとマユコの顔を順番にみまわしました。
「ひみつのあじは、あまいってね」
ユウイチロウは、自分でも、どこかで聞いたセリフだぞと思ったけど、
かまわずブランコから飛び降りて、ジャングルジムの方へ、駆け出しました。
つられて、キヨヒコとマユコもブランコのカコイをこえて、走ってきました。
〈よしっ、だいせいこう〉
ユウイチロウは、心の中で、つぶやきました。
******
「しんじてもらえないかもしれないけど、
オレは、じつは、……ぼうしの国にいったことがあるんだ」
キヨヒコとマユコは、思わず同時に、目を見合わせました。
「そこで、ティコというおんなのコにあったんだ」
ユウイチロウは、まじめな顔つきで話し続けます。
キヨヒコとマユコは、吹き出しそうな口を、あわてて、おさえました。
――あれは、そう、キヨヒコとあそんでたときのこと……
ユウイチロウが、話しはじめたのは、ジャングルジムの上でマユコ、キヨヒコの順番で話を聞いた後のことでした。ジャンケンで負けたのです。
なぜかユウイチロウは、いつも、ここぞという時には、ジャンケンで負けてしまうのでした。
――キヨヒコがオレの後ろに隠れて、ワッと驚かしたことがあっただろ。
となりにいたキヨヒコが、うなずきました。
――あの時、キヨヒコがオレに、「どうだぁ、おどろいただろ?」と聞いたから、
オレは、「てっいうかぁ、ハッとして、シュリケン!」と言って、
キヨヒコめがけてぼうしを飛ばしたんだ。
――あの時が、すべての始まりだったんだ。
オレは、ぼうしの国の入り口のスイッチを、おしちゃったみたいなんだ。
キヨヒコとマユコは、今度は、同時にツバをのみこみました。
――あとで、ティコにきいた話しなんだけど、
自分のぼうしの名前をさけびながら、ぼうしをブーメランのようにとばして、11かいてんさせると、ぼうしの国の入り口がひらくんだ。
――へぇー。そうなんだ。
ユウイチロウの、ぼうしの名前って、なんだったの?
マユコの目が、らんらんと輝きだしました。マユコは、不思議なことが大好きな女のコでした。
ユウイチロウは急に、声をひそめました。
――ティコ・ハットっていうんだ。
〈続く〉
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