第24話
街路灯の光も差し込まない、夜の「雑木林」の暗がりの中を、
灯りをともさずに目を凝らして進みながら、
昔、師匠に言われたことを思い出す。
「川に飛び込もうとする奴にゃ声掛けるもんじゃねぇ。
声掛けたら、その声合図に飛び込んじまう。
それと気付かれねぇように近付いて抱き止めるもんだ。
言って見りゃあ夜討ち朝駆け、つまり奇襲作戦と一緒だ。
要は、気付かれたらこっちの負け、ってこった」
その言葉を逆に言い換えると、
奇襲作戦も、こちらの立てる声や音で気付かれたらお仕舞い、ということだ。
(「敵」が、犬なんか連れてなければ良いけれど…)
犬でも連れていられた日には、
音だけでなく、匂いでも気付かれる恐れがある。
取り敢えず、犬の吠える声はしないけれど、
良く訓練された犬だったら判らない。
下劣な品性の持ち主だからと言って、
連れている犬までが性格の粗暴な、出来の悪い犬とは限らないから。
(そういう場合、犬の方が可哀想だとは思うけれど)
私は、付属の短い鎖の端の環を、右手の親指に通して握り込んだままの「得物」を、薬指と小指だけで固定し、
空いた残り三本の右手の指で、左手のゴルフクラブを左手の介添えのように持つと、
できるだけ身体を低くし、ゴルフクラブのヘッドを地雷探知機のように先に立てて、下生えの背の低い笹薮に紛れ込み、
舟が水脈を進むように、無駄に周りの笹を踏まないように心掛けながら、
慎重に足を前へと進めて行った。
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