第17話

「無沙汰は互ぇだ。そっちの婆様ぁ元気か?」


「はい、お陰様で…。

あの、…師匠。緊急の用件です。

うちの近くで、痴漢…と言うより婦女暴行、または誘拐の可能性が」


「何…?

おい、…みんなちいっと静かに頼む。祥太郎、この電話、音が出るように切り替えてくれ。

……千歳、詳しく話せ。何があった?」


「今、近所の公園です。

うちの近くの雑木林、…ええ、師匠もご存じの、『例の』雑木林です。

そこに、若い女性向けの、まだ新しいシティサイクル、…要するにママチャリが、不法投棄のゴミの中に。

前カゴの中に、持ち主の物らしい、岸根女子の校章の入ったスクールバッグ…通学カバンがありました」


「岸根女子か、…確か彼ㇲ処は、中高一貫のお嬢さん学校だな…。持ち主の名前は判るか?

…名札があった?でかした。おい、祥太郎、書き取ってくれ。誰かメモ紙と書くモン頼む…。

……祥太郎、用意はいいか、

よし、…千歳、読み上げてくれや。


……うん、……うん…。……分かった。

……千歳、祥太郎が今、警察に連絡してる。お前は今、…公園か。

いいか、絶対にそこォ動くな。後は俺等と、それから警察に任せろ」


「俺等…って、…師匠、今、何処で誰と何してるんです?随分と後ろがお賑やかですけれど…」


「『たぬき』だ。

ちょうど町内有志の近所の夜回りが終わったとこだ。

祥太郎も、勤めが夏休みだってんで引っ張り出した。

駐車場には足があるし、手元には得物もあらァな」



「たぬき」とは、

師匠、及び師匠の「お仲間」の行きつけ、

…と言うより、ほぼ寄合所と化している、師匠の家の近所の居酒屋さんである。


ちなみに、そこの「大将」も、師匠の「お仲間」の一人だ。

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