第15話

さて、…随分と長い寄り道になってしまったけれど、


ウォーキングで夏の夜の戸外に出た私は、

早くも鳴き出した虫の音を聴きながら歩くうちに、

例の「雑木林」の辺りに差し掛かっていた。


一時は「近くを通るのも嫌」だったけれど、

さすがに二十歳を過ぎると、そこまでのことはなくなっていた。



そのまま、足に任せて「雑木林」の入り口の前を通り過ぎようとしていた時だった。


「…?」

私は思わず足を止めた。


妙な違和感を感じたからだ。


毎日見ている場所に、まるで異物が紛れ込んだような違和感。

ちょうど、いつかの「芸術写真」を見つけてしまった時と同じような。


私は「雑木林」の入り口へと近付いた。



当時。「雑木林」のその辺りは、ご多分に漏れずと言うか、格好の粗大ゴミの不法投棄スポットと化していた。


勿論、持ち主の大手不動産会社の方でも、「不法投棄禁止!」の看板は立てているけれど、

不法投棄する方は「そんなもん知ったこっちゃない」と言う感じだった。


持ち主が地主さんだった時には、定期的に見回りもしていたらしい。

もし不法投棄があった場合には、ひとつひとつ調べ上げて、

場合によっては出る所に出ていたらしく、

私達が「雑木林」で遊び回っていた頃には、目立った不法投棄はなかったけれど、

(でなければ、いくら子供でも、そんなところで遊ぼうなんて思わなかっただろう)


管理が大手不動産会社に移ってからは、

言葉は悪いけれど「嘗められ切っている」という感じだった。


その、粗大ゴミの数々に紛れて、

如何にも若い女の子の乗るような、お洒落なデザインの、まだ新しい「シティサイクル」が一台。

良く見ると、防犯ネットの掛かったままの前カゴには、持ち主の物と思しき可愛いチャームの付いた、学校指定の通学用の物らしいスポーツバッグまで載っている。


こんな、金具が光っているような自転車を、

それも、荷物ごと不法投棄する粗忽者は、そうそういないだろう。

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