第13話

その後、その柵は、朽ちかけては思い出したように修繕されを繰り返し、

その当時には、その柵が何代目なのかも定かではなかった。



ただ、その少し前から

(それがどのくらい前からだったかも、全然覚えがないのだけれど)

木材を組み合わせたものではなく、


雨風で朽ちた柵の横板の替わりに、残った支柱に、プラスチックだか何だかの、太く縒り合わされたロープを良い加減に渡して、

「立ち入り禁止」の札を取り付けたものになっていた。

(そういうものに変更された理由は恐らく、「予算の都合」と呼ばれるものだったのだろう…)


つまり、力を加えてロープをたわめれば、その隙間から簡単に入れる程度のものだった。



後から聞いた話では、その「雑木林の切れっ端」は、元々は近所に住む地主さんのものだったそうである。


それが、代替わりのついでに、いわゆる「相続税対策」で売りに出され、不動産会社の手に渡ったのだそうだ。


木製の頑丈な柵を立てたのは、例の事件の当時、「雑木林」の持ち主だったその地主さんで、

途中から、残った支柱に良い加減にロープを渡したものに変更したのは、その不動産会社とのことだった。


私も、その、支柱にロープを掛け替える作業をしているところを見掛けたことがあるけれど、


実際に作業していたのは、

スーツの上着を、会社のロゴが入った作業用ブルゾンに着替えただけの、

妙にぴかぴかの革靴すら履き替えていない、

お尻に卵の殻でもくっついていそうな、

後ろからどつかれでもしたらあっさり地面に転がりそうな、

…要するに、いかにも頼りないと言った風情の

「オニーサン」が一人だけだったのを記憶している。

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