第8話

「…とりあえず、公園でも行く…?」


「…公園かあ…。今から遊べる遊具、あるかな…」


「…私達、ずっと『雑木林』で遊んできたから、公園に居場所ないよね…」


「……でも、…あの人達、この近所の人じゃないよね…?……だったら、毎日来たりはしないんじゃ…」


「…そうかな…?」


「…だって、…現に私達、『雑木林』が、家のすぐそばにあるから、毎日遊びに来てるんだってば…」


「…そっか…。あの自転車…。じゃ、…明日は『雑木林』で遊べるかな…?」



結局その日は、友達の一人が一度家に戻って持って来てくれた、ラケット二本とシャトルコックとで、交代でバドミントンのラリーをするくらいしか、遊びのネタは思い付かなかったけれど、


とりあえず、


「あの人達は『他所の人』だけれど、私達はご近所の住人。いざとなったら、近所の大人に相談すれば…」


という考えに「希望を託し」た私達は、


少なくとも、彼等に「雑木林」を追い出された時よりは、いくらか明るい気分になっていた。



やがて、太陽が西に傾いて、「カラスが鳴くから帰ろ」という時刻になり、


彼女達と手を振って別れた私は、帰宅の途中、寄り道をして、「雑木林」にもう一度行ってみた。



自転車は、…もう一台も見当たらなかった。

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