ぱちん、とはじけた暑い季節は夢の中

CHOPI

ぱちん、とはじけた暑い季節は夢の中

 つい先日まで薄手の掛布団一枚でも暑いと思っていたのに、まさか開口一番『寒い』と言って目が覚めるとは思わなかった。まだ活動を開始するには幾分早すぎる目覚まし時計を軽く睨みつけて、覚醒しきらない頭のまま寝巻の上から適当なパーカーを羽織って布団へと戻る。ぎゅっと抱きしめた抱き枕が思いの外冷えていて、だけど自分の体温で直ぐに温かくなるそれに、引きずり込まれるようにしてもう一度夢の中へと旅立った。


 次に目が覚めたのは、いつものアラーム音が鳴り響いた時間だった。布団から這いずり出てみれば、朝方に寒さで目が覚めたことが、夢では無かったことが着ていたパーカーで分かる。部屋の中も数日前とはうってかわって、かなり冷え切っている。まだ衣替えしてないんだけど……と心の中で悪態をつきながら、キッチンへと足を伸ばす。


 寝覚めの一杯、水がちょっときついなと思い、久しぶりにケトルでお湯をマグカップ一杯分沸かす。すぐに湧いたそれをマグカップに入れて、少し冷ましながら口へと運ぶ。温かいお湯を口に運ぶたび、お腹の奥底から温まっていくのを感じる。一昨日、暑さに負けて氷を入れたカフェオレを飲んでいたことが嘘のようだ。きっと今日を皮切りに、もう残暑は遠くへといってしまうんだろう。この調子だと、あっという間に冬の入り口に立っていそうだと思った。


 着替えようと思ってクローゼットを開けると、そこにはまだまだ夏の名残り。とはいえ昨日まではこれで過ごせていたのだから、正直嫌になる。羽織があればなんとかなるだろうと、とりあえず少しだけ厚手のものを選んだ理由わけは、着る物の選択肢が全て袖が短い物しかなかったからで。近いうちに薄手の長袖のものを買わなきゃと考えたところで、毎年同じことを考えながら気が付くと厚手のものが当たり前の時期になっていることを思い出す。そしてきっと、今年も例にもれずそうなるんだろう、なんて思う。


 身支度をさっさと済ませて家を出る。外に出てみれば、顔を撫でた風が予想以上に冷たくて驚いた。道行く人たちが皆、昨日までとは違って羽織物を着ていたり、少し厚手の洋服を着ていたり。そうした街の変化でも感じる、いきなり訪れた秋本番の気配。



 今日の夜はゆっくり温かいお風呂に浸かって、寝る前に温かいはちみつレモンでも飲もうかな



 街路樹の紅葉やイチョウと共に、ささやかな楽しみも秋色に染まっていく。

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