最終話 そして小説は伝説となる
「これは、もっとたくさんの人に読まれるべきですよ!いやぁ、面白かった……!」
「ああ!俺も感動したぜ……!」
コウスケとカルゴは興奮気味に感想を言い合っていた。
「あ、ありがとうございます……」
コウスケたちに絶賛され、ラヴァンはすっかり
「やっぱり、竜王様はすごいですね……!」
「いやいや……。そんなことないですよ……」
ルーアにまで褒められてしまい、ますます小さくなるラヴァン。
「嬉しすぎて、また空を飛び回りたくなっちゃいます……」
彼女の言葉に、コウスケは思わず笑ってしまう。
(もしかしたら、カルゴさんの知り合いが見たのは、この姿だったのかもしれないな……)
コウスケはふと思った。
「なぁ、竜王さんよ……。本当に、この小説を俺たち以外の誰にも読ませるつもりはねえのか?」
カルゴが尋ねる。ラヴァンは小さく頷いた。
「はい……。これは、あくまでも趣味で書いているものなので……他の人に見せるのは恥ずかしくて……」
「そうか……」
カルゴは残念そうな声を出した。
「でも、良いんじゃないですか?『この城に入った者だけが読める、伝説の小説』なんて……。なかなか粋だと思いませんか?」
コウスケが言うと、カルゴはニヤリと笑って言った。
「確かにな……。よし!決めたぞ!俺たちはこの城を、竜王さんの小説を守ることにする!」
「えっ……!?」
カルゴの言葉に、ラヴァンは困惑の声を上げる。
「つまり、俺たちがここを警備するってことだ。竜王さんに何かあったら大変だからな」
「そういうことなら、俺も手伝いましょう」
コウスケも笑顔で同意する。
「で、でも……。コウスケさんは隣の国の勇者なんじゃ……」
「それなら心配いりません。俺のいた国の王様は、俺が何をしても良いと言ってくれていたので」
「そ、そうなんですね……」
コウスケの言葉を聞いて、ラヴァンは戸惑っている様子だったが、しばらくして納得したように頷いた。
「よし!そうと決まれば、早速仕事に取りかかるぞ!」
「了解しました!」
こうして、竜王の城は新たな仲間を迎え入れたのであった。
◆◆◆
数日後。コウスケとカルゴは、竜王の部屋に呼び出された。
「どうしたんだろうな……?」
「さあ……?」
二人が首を傾げると、部屋の扉が開いた。
そこには、ラヴァンとルーアの姿があった。
「お呼び立てしてすみません……。実は、二人に見せたいものがありまして……」
ラヴァンはそう言って、数枚の原稿用紙を取り出した。タイトルには、『竜王と仲間たちの冒険
「この小説が、完成したんです!」
「「おおっ!」」
コウスケとカルゴは感嘆の声を上げた。
「私は一足先に読ませていただいたのですが……。素晴らしいものでしたよ!」
ルーアは熱っぽく語る。
「そ、そんな……。ルーア、
ラヴァンは照れたように笑う。
「早く読みてえ……!」
「同感です!」
コウスケとカルゴは期待に満ちた目で見つめる。
すると、ラヴァンはゆっくりと深呼吸をした。そして──
「では、いきますね……」
そう呟いて、小説を読み始めた。
その日から、コウスケたちの任務は、竜王の城の警備から竜王の新作を読むことに変わっていったのだった。
◆◆◆
ペディオン国、
「……なあ、聞いたか?『伝説の小説』の
「もちろんだ。なんでも、その物語はこの国一番の素晴らしさらしいな……」
男たちは、酒場で酒を飲んでいた。
「それで、どんな内容なんだ?」
「それが……。俺も読んだことがないから、わからないんだよな……」
男の一人が肩をすくめる。
「なんだよ……。お前も知らないのかよ」
別の男がつまらなさそうに言った。
「仕方ないだろう。あの、『竜王の城』に入らないと読めないんだから」
「そりゃそうだけどよ……。でも、そんなに凄い作品なのかねぇ……」
男は疑いの目を向ける。
「さあな……。でも、あの城に出入りしている奴らは、口を揃えて『最高
「へぇ……。一度読んでみたいな……」
酒を飲みながら、二人の会話は続いていくのだった。
◆◆◆
ラヴァンの書く小説は、まさに
噂を聞きつけた人々が、竜王の城を訪れるようになり、コウスケとカルゴも忙しくなっていた。
一方、ラヴァンはというと……
(今日は、どんな物語を書きましょうか……?ふふっ……。考えるだけでワクワクします……!)
とても幸せそうな顔で、羽ペンを走らせていた。
竜王の城は、今日も平和である。
竜王は争うより小説が書きたい 夜桜くらは @corone2121
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