第6話 それぞれの行動

 コウスケたちが城へ向けて出発した頃。ラヴァンは自室の布団の中で丸くなっていた。布団に収まらずに飛び出た彼女の尾は、ブルブルと震えている。


「うぅ~……。もう、勇者はこの国にいるんですよね……。この城に来るのも時間の問題です……。どうしましょう……」


 その時、部屋の扉がノックされた。ビクッと飛び起きると、彼女は恐る恐る扉へと近づいていく。


(だ、誰でしょう……?まさか……勇者……!?)


 緊張しながらドアノブを握り、扉を開いた。するとそこにはルーアがいた。

 彼女は、少し切羽詰まったような顔で言った。


「竜王様、落ち着いて聞いてください。……たった今、勇者がこの城に向かっているとの情報が入りました。おそらく、この城に着くのもそう遠くはないと思います」


「ゆ、勇者が……!?そんな……!」


 ルーアの言葉に、ラヴァンは愕然がくぜんとした。


「はい……。私たちが相手をしますので、竜王様はこの部屋から動かないでください。いいですね?」


「は、はい……。わかりました……。くれぐれも、気をつけて……」


「はい……。では……」


 そう答えると、ルーアは去っていった。

 残されたラヴァンは、しばらくの間その場に立ち尽くしていた。



◆◆◆



 一方その頃。コウスケたちは、城のすぐ近くまで到着していた。


「へぇ……!近くで見ると、やっぱり迫力があるな……」


 コウスケの言葉に、カルゴが苦笑する。


「いやいや……。そんな呑気のんきな感想じゃなくてだな……。……まぁ、いいか。とりあえず、門の近くに行くぞ」


「はい!」


 コウスケたちは、こっそりと城門の近くへ向かった。

 すると、そこには兵士らしき姿があった。


「あれは……?」


「見張りだな……。多分、何か異変が起きてないか調べてるんだろうよ」


「なるほど……」


 二人の会話を聞いてか、兵士がこちらに気づいて声をかけてきた。


「……ん?怪しい奴め!何者だ!ここがどこだかわかっているんだろうな!」


 すると、カルゴが前に出た。


「おいおい……。俺らは旅のもんでね。ちょっと中に入れてもらいたいんだが……。ダメか?」


 すると、兵士は疑うような視線を向けた。


「旅のものだと?……ふん。嘘をつくな!貴様らのような格好をした旅人など、見たことがないわ!」


 そう言い放つと、兵士の姿はみるみるうちに大きくなっていった。


(な、なんだ……!?)


 コウスケが驚いている間にも、兵士の身体は大きくなっていき、ついには元の倍近くある大きさになった。

 そして、その身体は灰色のうろこで覆われており、背中には翼が生えていた。


「こ、こいつは……!!」


 カルゴが驚愕きょうがくの声を上げる。


「竜王様の城に無断で入ろうとするとは……。許さんぞ!!侵入者は排除してくれる……!」


 兵士だった竜が叫ぶと、城の中から他の兵士たちが現れた。

 そして、彼らは次々に竜へと姿を変えていく。


「な、なんですかこれは……!?」


「クソッ……!そういうことかよ……!」


 コウスケの問いに、カルゴが悔しそうな声で答えた。


「どういうことです!?」


「……噂は本当だったってことだ!あの城の中に、竜王がいる……!コウスケ!ここは俺たちが食い止める!その間に城の中に入るんだ!」


 カルゴはそう言うと、剣を抜いて構えた。


「カルゴさん!でも……」


「大丈夫だ!俺らを舐めんなよ!……早く行け!兄ちゃん!」


「くっ……。はい!すみません!」


 コウスケは一瞬迷ったが、すぐに城の中へと走り出した。

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