第2話 勇者コウスケ

ところ変わって、こちらは竜王が住む城があるペディオン国とは別の国。

インペラール国というこの国に、一人の青年が暮らしていた。


彼の名前は、コウスケという。彼の名前はこの国には不釣り合いなものに聞こえるだろう。それは当然のことだ。彼はこの世界で生まれた人ではないからだ。


コウスケは、いわゆる『異世界召喚者』と呼ばれる人物だったのだ。

彼がこちらの世界に来たのは今から三年ほど前のことだった。


当時、インペラール国ではある問題が起きており、彼はその解決のために、この世界に呼ばれたのだ。

その問題というのは、魔物の大量発生だった。

ある日突然、大量の魔物が現れて人々を襲ってきたのだという。

最初は一体だけだったのだが、日を追うごとにどんどん数が増えていき、ついには数十体にも及ぶ魔物たちが国中で暴れまわっている状態になってしまった。


このままだと国が滅びてしまうと考えた王は、言い伝えられている勇者召喚の儀式を行うことにしたのだ。

そして、召喚されたのがコウスケだったというわけである。


コウスケは始めこそ戸惑ったものの、すぐに自分が何をすべきなのかを理解した。

この世界で生きる人々を守るため、彼は必死になって戦った。

そして、長い戦いの末に全ての元凶であった魔王を倒すことに成功したのだ。

こうして国は救われ、平和が訪れたのだった。


……しかし、コウスケの戦いはまだ終わっていなかった。

魔王を倒した後も、彼は元の世界に戻らず、この世界で生きていくことに決めたのだ。


その理由は、まだ見ぬ世界を冒険したいというものだった。それを聞いた王は大いに喜び、彼に対して様々な援助を行った。

まずは、生活に必要なお金をくれたこと。次に、住む場所を提供してくれたこと。さらに、冒険者として必要な知識を教えてくれたこともそのひとつだ。

他にも、旅をするために必要な道具を用意してくれたりなどしてくれた。


また、彼は王だけでなく、多くの人々に感謝されていた。

魔王を倒して国の窮地きゅうちを救った英雄として、コウスケの名は知れ渡り、皆からしたわれるようになった。


そんな彼は、インペラール国を拠点として、各地を旅するようになっていた。

その途中で出会った人々に自分の経験を話したり、時には一緒に魔物と戦ったりすることもあり、充実した日々を送っていた。



そんなある日、コウスケはある依頼を受けることになった。

それは、他国への物資を運ぶ商人の護衛という依頼だった。

護衛の依頼自体は珍しくないが、今回頼まれたのは隣国までだ。


(この国には、まだ行ったことがなかったな……)


今まで訪れたことのある場所は、全てインペラール国内のみだった。

他の土地を見てみたいと思っていた彼にとって、今回の仕事はちょうどいい機会になるかもしれない。

そう考えたコウスケは、引き受けることにした。

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