11話 日本を背負うということ


 前半が終わった後のロッカールームで、ペルコジーニョは俺を後半からピッチに投入する旨を選手たちに伝えた。


「マキはトップ下ネ。金川はポストでマキや2列目に落とすのを継続」


 俺がトップ下か。

 日本は4231のフォーメーションで、金川先輩をワントップに置いてその背中を見るようにトップ下に俺を置く。


 トップ下のポジションは、本来足元の技術に長けている選手やボールを運べる選手を置いて前線を組み立てさせるが、その役割は俺みたいな不器用なFWにできるわけもない。


 となると、ペルコジーニョが望んでいるのはそのようなプレーではなく、金川先輩とのコンビネーションだと思う。


「槇島……常に俺の背後で構えてろ」


 ピッチに入る前、金川先輩からそう言われた。

 俺なんかが金川先輩のプレーについていけるのか……不安しかない。

 でも俺だってそこそこの才能を見込まれてここにいるんだ。

 自信を持ってやるしかないだろ。


「日本代表になって初出場……」


 後半の頭から交代で入り、ピッチの芝を踏み締めた途端、その重圧がドッと込み上げる。


 日本を背負うっていうのは生半可なものじゃない。

 それにここまで来れたのは奇跡でも何でもない、実力だ。

 奇跡で来れるほど甘い世界じゃないからな。


 でも……絢音と出会ったのは必然が生み出した奇跡のようなものだったと思う。


 俺は佐々木絢音の隣を歩く人間に相応しくなるために、もっと上を目指す。


「槇島祐太郎、準備はいいか?」


 先にピッチで屈伸をしていた金川先輩が俺に問いかける。


「はいっ、俺、決めますから」


 見てろよ絢音。

 これまでの全てをひっくり返すような試合を見せてやるからな。


「ここからが俺のサクセスストーリーの始まりだ」

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