2話 二人の新しい挑戦


「祐太郎! U22選出おめでと〜っ!」


 ポンッとシャンパンの栓を開けワイングラスにトポトポと注いだ絢音は豪快にシャンパンを呷った。

 俺の選出を祝うというより絢音が酒を飲みたいだけだろ。

 俺はまだ18歳なので大人しく麦茶を口にする。


「絢音、あんまり呑むと酔っ払うぞ」

「酔っ払わないもぉんっ」

「すでに呂律が回ってないんだが」

「えへぇ祐太郎〜」

「なんだ?」

「今夜も……する?」

「はぁ。もう酔っ払ってんのか」

「酔っ払ってなーいー!」

「はいはい」


 俺は適当にあしらいながら絢音のグラスにシャンパンを注いだ。


「ねえゆーたろー、U22日本代表ってどれくらい凄いの?」

「どれくらいと言われても……そうだなぁ?」


 よく考えたら俺も分かってないところがある。

 五輪大会を来年に控えたU22日本代表は、代表ウィーク(代表試合のために用意されたプロサッカーの中断期間)に国際親善試合を多く組んでいるから、俺が選ばれたのはお試しの面もあるのかもしれない。


「U22って俺の2個上で今年21歳になる選手が中心で、今年19歳になる俺が選ばれるのは……まあまあ凄いことなのかもしれないな」

「ふふんっ! やっぱり祐太郎は凄いってことだよね! いやぁ世界も分かっちゃったかぁ」

「別に俺が凄いってわけじゃないよ」

「え?」

「絢音のおかげで俺はここまで来れた。俺じゃなくて絢音が凄いんだよ」

「そ、そんなこと!」

「いつもありがとな、絢音」

「祐太郎……っ。好きぃぃーっ!」


 酔っ払っているからかポ●ョみたいな語彙力で抱きついてくる絢音。

 俺も大概だが、段々と馬鹿ップルになってきているような。


 抱きついてきた絢音のミディアムショートの髪が俺の鼻をくすぐる。

 く、くしゃみが……っ。


「そうだ! 実はわたしからも報告があって!」

「え……? まさか子供」

「な訳ないでしょ! いつもちゃんと着けてあげてるじゃん!」

「そ、そうだよな、あはは」

「それとも今日は、特別な日だから無しでする?」

「し、しないって! さっさと話戻せ!」


 そっち系の話になりそうだったので、俺は強引に軌道修正する。


「ごほんっ。実はわたし、明日から一人でアイドルを任されることになりました!」

「一人で⁈ それめっちゃ凄いじゃんか! 誰の担当なんだ?」

「それは明日教えてもらうんだけど、きっと新しいアイドルグループの担当になると思う!」

「絢音も夢に向かって一歩前進だな?」

「うんっ!」


 俺たちはお互いに刺激し合って一歩ずつ前進してる。

 絢音はアイドルのプロデューサーとして、俺はサッカー選手として。


 俺たちのサクセスストーリーはまだ始まったばかりだもんな。


 ✳︎✳︎


 ——翌日。

 ピシッとしたスーツ姿で坂木真由美芸能プロダクションに出社したわたしは、坂木さんの社長室に呼び出されていた。


 今日からわたしは、初めて一人でアイドルを担当することになる。

 これまでは坂木さんや他のプロデューサーさんと一緒に行動させてもらって勉強する立場だったけど、今日からわたしは一人でやっていかないといけないんだ。


 でもこれが、わたしが一人前のプロデューサーになるための第一歩……なんだ。


 祐太郎も頑張ってるんだし、わたしも気合い入れていかないと。

 わたしは社長室のドアをノックする。

 すると「入ってー」という坂木さんの声を聞こえ、わたしはドアノブに手をかけた。


「失礼しま——」


 え……?


 中にいたのは、社長デスクの前に座る坂木真由美と、その前に立たされている。


「……絢音、久しぶり」

「水城……さん」


 そう、水城月乃がいたのだ。




————

『1万フォロワー行きました!ありがとうございます!』


そして本日、8月9日は槇島祐太郎の誕生日です!

8月9日は、槇島のプレースタイルのモデルになったあの選手の誕生日でもあります!

おめでとう槇島ぁぁ!!


そして書籍版発売まで残り数週間です!

また近くなったら告知します!

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