人数合わせで合コンに参加した俺は、なぜか余り物になってた元人気アイドルで国宝級の美少女をお持ち帰りしました。【書籍化・コミカライズ化決定!!!】
10話 約束の試合(元アイドルちゃんのモーニングルーティン)
10話 約束の試合(元アイドルちゃんのモーニングルーティン)
——試合当日 AM6:00
アラームの音と同時にあたしは目を覚ます。
「ふぁあ〜、もー6時ぃ?」
眠たい目を擦ると、ぼやけた視界が明瞭になる。
あれ、どうしてこんな時間に目覚ましセットしたんだっけ?
1限の講義は無いし、アイドルはとっくに辞めてるし……。
「……そうだ、今日は槇島の試合だっ」
あたしはベッドから飛び起きると、最近買ったお気に入りのモコモコパジャマを脱ぎながら電気ポットのスイッチを入れてお風呂に向かう。
試合は8時半からだし、早く準備しないと。
シャワーを浴びながら湯船を溜め、髪を洗った後、今度はウサギの形をしたボディスポンジを手に取り身体の隅々まで洗う。
「お風呂溜まったかなぁ〜?」
身体中の泡をシャワーで流したら、湯船の方を確認する。
よし、今日もきっちり5分。
高速湯はりで湯を溜めて入浴剤を入れたらつま先からゆっくり入る。
「あったかーい……」
温かい湯船に浸かるモーニングルーティンは、東京に来てからずっと続けている。
朝は苦手だけど、これだけは欠かさずにやっている。
湯船で身体が温まってポワポワな気持ちの中、立ち昇る湯気をぼーっと見上げる。
「槇島のやつ、緊張してるかな?」
槇島と交わした約束。
ゴールを決めたらとっておきのディナー、ノーゴールならなんでも言うことを聞く。
「ディナーの内容はもう決めてるからいいとして、もしノーゴールだったらどうしよう」
槇島があたしの言うことを何でも……かぁ。
なにをお願いしよっかなぁ。
「そうだっ、買い物の荷物持ちとか? またあのカフェに付き添わせるのもいいなぁ。この前のパンケーキ美味しかったし」
……でもせっかくなら、槇島が一息つけるものがいいよね。
「うーん……まっ、その時の気分で決めればいいやっ」
お風呂から出てバスタオルで身体を拭うと、いつも大事な時に着るネイビーの下着と、モコモコの部屋着を着て、ドライヤーで髪を乾かす。
完全栄養食のパンと紅茶の朝食を摂って、歯磨きしながら今日着ていくものを決める。
元アイドルというのは面倒なもので、可愛すぎると目立つし、かと言ってダサい服はプライドが許さない。
大人カジュアルな感じで落ち着いた雰囲気にしたいんだけど……。
とりあえず、トップスにブラウンのキャミワンピを重ねるくらいでいいかな。
服が決まったらすぐにメイクへ。
丁寧にやった所でどうせマスクするから誰にも見せないけど……でも槇島には見せるから、ちゃんとやろう。
槇島なんかに綺羅星絢音の時の方が可愛いなんて思われたら、私のプライドが許さない。
「よし、メイク完了っ。まだ8時前だし、ゆっくり行けるっ」
鼻歌交じりにさっき決めた洋服を身に纏い、キャンパストートを肩にかけてマンションを出た。
✳︎✳︎
8時を少し過ぎたくらいの時間に、大学の最寄駅へ到着したあたしは、今一度マスクとメガネを整えて、グラウンドへ向かった。
高東大の大きめなサッカーグラウンドに到着すると、既に観客席は開放されていて、Bチームの試合だからか、観客がかなり少なく閑散としていた。
アイドル時代、満員のドームしか見てこなかったあたしにとってそれは目を疑う光景だった。
「ど、どこで観れば……いいんだろ」
あたしが観客席をウロウロしていると、突然背後から肩をツンツンされる。
あ、もしかして槇島っ?
「もう、槇島ったら心配しなくても」
振り返ると、そこには。
「さ、佐々木、ちゃん? だよね」
「……あ、藍原、さん」
花柄ワンピにGジャンを羽織った、胸の大きな女子大生。
そう、あたしの肩を叩いたのは、藍原ゆずだった。
「よかったぁ、人違いだったら恥ずかしい思いするところだったよー」
この子確か、高校まではサッカーやってたとか、ゼミの自己紹介の時に言ってた。
じゃあその繋がりで応援に? でも、わざわざ2軍の試合なんて……まさか。
「佐々木ちゃんも、槇島くんの応援で来たの?」
『も』ってことは、やっぱり槇島が絡んでた。
あの男、なんだかんだ言って藍原さんに手を出そうとしてるじゃないよね?
とりあえず、探りを入れてみよう。
「藍原さんこそ、槇島に誘われたの?」
「え? えーっと、そういう訳じゃないんだけど」
あれ、槇島が誘った訳じゃないの……?
「私、サッカー好きだから。それに一昨日の帰り道で槇島くんと話したら応援したくなって」
「そ、そうなんだー(棒)」
やっぱりこの子、槇島に気があるんじゃ?
てか、帰り道って何のこと?
「佐々木ちゃんの方こそ、槇島くんに誘われたの?」
「ま、まぁそんな感じ?」
「……へぇ」
本当はあたしの方から観に行くって言ったんだけど、それを言ったらややこしいことになるし。
ほんの少しニュアンスが違うけど、いいよね?
「ね、佐々木ちゃん。せっかくだし一緒に観ようよ。私一人だったから心細かったんだぁ」
「うん、いいよ」
正直、藍原さんがいて助かった。
あたし一人じゃどの席に座ればいいのかすら分からなかったし、ありがたい。
槇島がベンチスタートということもあり、後半に敵ゴールになる方向の前目の席に2人で座った。
「槇島くんはきっと後半に出てくるから」
「後半……ねぇ」
槇島のやつ、少ない時間でも絶対点決めてやるとか言ってたけど、本当に大丈夫なのかな。
グラウンドに選手たちが入ってきて、アップが始まる。
当然、槇島の姿もそこにあり、その真剣なその眼差しに期待と不安が入り混じる。
「槇島……」
約束とか関係なく、頑張ってるキミが報われないと……あたしも、嫌だから。
絶対に決めて槇島。
あたしにご飯、作らせてよ。
✳︎✳︎
——
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