人数合わせで合コンに参加した俺は、なぜか余り物になってた元人気アイドルで国宝級の美少女をお持ち帰りしました。【書籍2巻は8月2日発売!】
3話 元人気アイドルが合コンで余り物扱いされてたから俺が持って帰る 03
3話 元人気アイドルが合コンで余り物扱いされてたから俺が持って帰る 03
「単刀直入に聞く。お前はあの元人気アイドルの……"
「せーかい。なーんだ、知ってたんだ」
「日本人ならお前の名前を知らない奴はいねぇって」
綺羅星絢音は、国民的アイドルグループGenesistars(ジェネシスターズ)の
確か、学業に専念したいという理由で辞めたらしいが……。
「綺羅星絢音は、国民的アイドルグループで不動のセンターだったんだろ?」
「なーんか浅知恵だなぁ。あたしのこと、もっと詳しく知らないの?」
「第109回高校サッカー選手権のマネージャーをやってて」
「それはキミがサッカー部だったから知ってるんでしょ?」
「そんなこと言われても、俺は別に綺羅星のファンとかじゃないし……これ以上のことは知らないっていうか」
「ならあたしが直々に教えてあげる」
そう言うと佐々木は
「——ジェネシスターズ。始まりの星の輝きを目指し、90人の姉妹が集まったアイドルグループ。その中でも本当の星の輝きを放った女の子だけが、センターになれるの——そしてそれはあたしのことだった」
「……なんだ、結局自慢かよ」
「自慢ですぅー。だってあたしはこの星空の星たちと同じ光を放てるんだから——」
綺羅星は立ち上がると、さっきより大きく手を広げて夜空を仰ぐ。
「って、思ってたんだけど」
「けど?」
「同じグループの子と意見が衝突しちゃって。あたしとその子はセンターとリーダーの関係。不仲説が流れたらグループの崩壊を招きかねない」
「つまり、辞めた理由は学業を専念するとかじゃ無かったんだな?」
「当たり前。『綺羅星絢音はメンバーと喧嘩したから辞めまーす』なんて言えないでしょ? 結果的にあたしのせいで、その子も辞めることになってGenesistarsはリーダーとセンターを失った。ほんと、どうしようもないよね」
返す言葉が、見つからなかった。
漫画とかのカッコいい主人公なら「そんなことない!」とか、「お前は悪くない!」って言って、彼女を擁護するかもしれないが、俺はそれを言えるほど立派な人間じゃない。
「あーあ、久しぶりに走ったからあたしもう汗だらだら。どこかで休憩してかない?」
「まさか休憩ってラブホのことか?」
「ら、らぶっ⁈ 違う! 神聖なアイドルに向かってなんてこと言ってんの!」
「"元"だろ」
「関係ないの!」
佐々木は顔を真っ赤にして怒っている。
佐々木の豊かな感情の変化を見ていると、元アイドルとは思えないくらい身近に思えた。
さっきまでは冷たいと感じでいた春の夜風が、この河川敷では心地よく感じた。
「キミってデリカシー無いんだね!」
「だって話し方的に俺のこと誘ってんのかと思って」
「はぁ⁈」
佐々木は再び、月明かりだけでも分かるくらい、頬を赤く染めた。
「ばか! キミみたいな男……
「まっ、そうだよな」
返事をしながら、俺は草むらに寝転んだ。
「俺、スポーツマンのくせに日常生活とかめっちゃだらしないし、服もジャージを着回してるし、バイトと仕送りで得た金だって、全部スパイクに使っちまう。ほんと、どうしようもないやつだよな」
「自虐的にならないの! 男の子でしょ!」
「そりゃ、男の子だけどよー」
ナーバスな気分になった俺に合わせてくれたのか、佐々木は隣に座り直す。
二人で夜風に吹かれるこの時間はなんだか青春っぽかった。
「今、気づいたんだけどさ」
「どうしたの?」
「綺羅星絢音って、たしか俺より1つ年上だったよな」
「はぁ、今更?」
「……す、すみません」
「敬語やめて。同じ大学1年生なんだから」
「すんません」
「やめろっつってんの」
佐々木は寝転がる俺の鼻頭を人差し指でぐりぐりしてくる。
「やっ、わ、分かったから! タメ語でいいんだな綺羅星?」
「綺羅星って呼ぶのもやめて。本名は佐々木絢音だから」
「じゃあ佐々木。これでいいのか?」
「よろしい」
佐々木は笑顔で返事すると、俺の鼻先を人差し指でピンッと弾いた。
「こんなおバカなキミでもサッカーは得意なんでしょ? よし、この選手権公式マネージャーのあたしが直々に観に行ってあげようかな?」
「別に無理して来なくていいよ。次の試合、たぶん俺ベンチだし」
「弱気にならないの! サッカーだろうがなんだろうが、向上心がない人間は淘汰されるだけ!」
「うわ、元アイドルさんが熱血っぽいこと言ってるだが」
「いい? 次の試合、あたしが観に行ってやるから、絶対に点を決めること! 出来なかったら罰ゲームだから!」
「ば、ばつげーむ?」
「うん。内容は、そうだなぁー。あたしの言うことを"なんでも"一つ聞く。それでどう?」
うわぁ。なんだそのベタな約束。
下手に約束するとその方がプレッシャーでやりづらいんだが……。
「ちなみに約束通り俺が点決めたら?」
「……お、おめでとー。ひゅーっ」
「何も無しなのかよ」
「仕方ない、じゃあご飯奢ってあげる」
「ごはん?」
「とっておきのディナーを用意してあげる。これでどう?」
「どう? と言われましても」
「断るなら明日五十嵐さんたちに、キミと抜け出した後キミがあたしに強引にヤッたってあることないこと言いふらすよ〜?」
それは面倒なことになりそうな……ならないような。
「ヤる前提みたいな合コンから抜け出してる時点で、そんなこと言いふらしてもダメージは無いような……」
「藍原さん、ガッカリするだろうなぁ」
「あのさ、藍原を好きなのは阿崎の方だから」
「え、あんなに仲良さそうに話してたのに藍原さんのこと好きじゃないの?」
「そりゃ可愛いとは思う。身体つきも良いし、サッカーも好きだし、かなり良さげな子だけど……阿崎が狙ってるし、そもそも俺のタイプじゃないというか」
「ふーん」
「なんだよその疑いの目は」
「ま、それは置いといて。さっきの約束、するでしょ?」
佐々木は俺の胸を人差し指でツンツンしながら問いかける。
例え次の試合ノーゴールでも、佐々木のことだから酷い命令はしないだろうし、逆に点決めたら、試合後の晩飯代が1食浮くわけで。
「……よし、約束する。次の試合、スタメンだろうが途中出場だろうが絶対点決めてやる」
「うんうんっ。それでこそ男の子だ」
佐々木はその後、次の試合の日付を聞いてきて、それをメモしたらそのまま走って帰って行ってしまった。
「またね、槇島っ」
元アイドルで、謎に熱血コーチみたいで、やけに馴れ馴れしい。
最初から最後まで不思議なヤツだった。
こんな時間だし、彼女を家に送るべきだっただろうか?
いや、駅も近いし変に気を使うとキモがられるからやめとくか。
佐々木の後ろ姿を見送ってから、俺は河川敷を歩いてマンションの自室に帰ってきた。
ジャケットを脱いで、ソファで足を伸ばしながらスマホを確認すると、チャットアプリ『lime』にメッセージが入っていた。
『阿崎:こっちは持ち帰り失敗(泣)お前だけずりーぞ!』
はぁ……俺の方は元アイドルと変な約束を交わすほどの仲になったと言うのに、お前らときたら。持ち帰りすら出来て無いなんてな。(俺も出来てないが)
一応、俺は上手くやった方だが、ここは空気を読んでこいつに合わせておくか。
『俺も店を抜ける口実に使われただけだった。佐々木って子も俺と同じで数合わせだったらしい』
『阿崎:そうなのか! なら良かった(安堵)やっぱサッカーバカのお前に恋愛とか無理だよなぁ』
阿崎の野郎やっぱウザいな。
1週間くらいブロックしとこ。
✳︎✳︎
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4月21日よりスタートの最新作!(この作品以来のアイドル作品です)
【SSR美少女に振られた俺は、同じクラスのURアイドルにダル絡みされてます〜学園のアイドルに振られたら、芸能界のアイドルに付き纏われるようになった〜】https://kakuyomu.jp/works/16817330656159107163/episodes/16817330656159141400
星野星野3作品目のアイドル作品です!(過去2作品は、この作品も含めて書籍化決定)
よろしくお願いします!
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