第5話  淳は生きている

 淳が生きていることだけは、かなり早いうちに教えてもらいました。

私はそれを心から喜び、自分が生きていたことより嬉しかったのを覚えています。

やっと少しだけコミュニケーションが取れるようになって、母に淳のことを尋ねると、何だか歯切れが悪く、すぐに別の話題に話をそらそうとします。

いったいなぜなのか分からなかったけれど、そのことをさらに突っ込んで聞く勇気が、その時の私にはありませんでした。

淳は私よりさらに深刻な状況なんだろうかと、ただ想いを巡らせるだけしかありませんでした。


三カ月でほぼ治療は終わりました。

あとは体のあちらこちらに埋め込んだ、矯正用の鉄棒をぬくだけでした。

ただこちらの方は骨がまっすぐになって、固まらないと鉄棒が抜き取れないので、ここが一番時間がかかりました。

そして新たな問題が起こりました。

私は、重傷病棟から、少し良くなった人用の病棟に移っていましたが、まだ一般病棟と言うわけにはいきませんでした。

まだ多くの問題がありました。

その一つが、いったい私の体がどれくらい動くのか、ということでした。

様々な機械に接続しなくて良いと言うだけで、まだまだ私は予断を許さない。

だから、私がどこまで回復するか誰にもわかりませでした。


主治医の先生は、死んでもおかしくない私が、ここまで回復したのだから、たとえ歩けなくても御の字という感じでした。

大きな神経は切れていないので、半身不随とかそういうことはないだろうと言われましたが、何しろあの大怪我なので、おそらくどこかしら神経や筋が切れているので、腕が肩より上がらないとか、歩くときに足を引きずってしまうとか、何かしらの障害は残るだろうとは言われていました。

また神経が正常でも私は三か月間寝たきりだったので、足の筋肉が落ちてしまって、まず普通に歩くためのリハビリをしなければなりませんでした。


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