第7話 Bパート~艶・紫・降・臨~
「そう、それじゃこちらも本気で行くわね……変身」
「ッ!!!」
瞬間、ラクシェンヌの腹部に何か宿る。
まさか、あれは……ッ!
そしてラクシェンヌの身体が巨大化し……レグルス・フィーネに似た巨体を象っていく!
「まさか、グアテガルがここに……ッ!」
「ふふ、そんなわけないでしょう……これはあの御方のクローン。行動規範だけが共有された、大切な御現身よ」
「くっ、姉様にだけ手を汚させるなんて、卑劣な……ッ!」
「何を言ってるの。あの御方にもしものことがあってもいけないもの……何せ、いずれはこの全宇宙を治める御方なのだから」
そう言ってラクシェンヌは手を上げる。その様子から僕らは全てを察する。
「そして、その御方を守ることこそ私の使命。故にこの『鋼衣』はあの御方の盾であり、矛であるのよ……さぁ行くわ。シリウス……イン、エナジードレッサー」
そして空から紫色の輝きが降り注ぐ。その光を浴びたラクシェンヌの身体に、ドレスが纏われていく。
それは、『鋼衣』とは思えない煌びやかなドレス。無骨さは一切なく、まるでこれから舞踏会へ出向くような華麗な衣装へ包まれていく。
そんな『鋼衣』を纏って……ラクシェンヌは、この天空に君臨した。
「艶・紫・降・臨……竜女王・ペタシリウス、今ここに降臨したわ」
そう言って邪悪なる波動を放つペタシリウス。その威圧に、僕らの肌が波打つのを感じる。
「――勇」
「……うん、わかってる」
けれど、退くわけにはいかない。今ここで退いたら間違いなくこの地球全体に被害が出る。
もうこの島にいた人々の命は救えないけど……これ以上の犠牲も、避けなければならない。
「行こう、ハツネさん」
「ええ、勇……私たちの力、見せてあげましょうッ!」
瞬間、僕らはブースターを点火した。白銀の翼を展開し大きくはためかせ、一気にペタシリウスとの間合いを詰めたッ!
「はぁあああッ!」
そして手に持っていたフォトン・レイピアで、一気に相手の胸を貫いた。
「……ふっ」
そしてそれと同時に。
スッ……
「ッ!」
「ッ!?」
ペタシリウスは大きく避けようとせず……まるでレイピアの側面を舐めるように身体を仰け反らせ、そのままこちらへ迫ってきたッ!
わずかにレイピアの刺突は届かず、逆にペタシリウスとテラレグルスの間合いがさらに詰められるッ!
「喰らいなさい」
そしてエネルギーを貯めた掌を……一気に顔へ向けてきたッ!
「く……ッ!」
それを僕らは間一髪身体を仰け反らせて避けるッ!
顔の前を光の掌が通り過ぎる……そう思った瞬間。
グニャリ。
「ッ!?」
掌はさらに下を向き、僕らの顔を追尾するように襲いかかってきたッ!
避けたと思った攻撃が、またも眼前に迫るッ!
「ぐっ……ぐあぁああッ!!!」
ドガァアアアアアアアンッ!!!
今度こそ避けられなかった。
僕らは顔に光の掌の直撃を喰らう。衝突の瞬間弾けた攻撃は、まるで零距離で炸裂する爆弾のような威力を纏っていた。
思わず、僕らは空から墜落してしまう。
バシャアアアアアァァァンッ!!!
「テラレグルスッ!」
リアナさんの声が響く。なんとかそれで正気を繋ぎ止めた僕らはゆっくりと海面から立ち上がる。
「はぁ、はぁ――勇、大丈夫ですか?」
「ハ、ハツネさんこそ……」
直撃を喰らった。ダメージは大きい。僕もまだ頭がくらくらする中、ペタシリウスが飛ぶ空を見つめる。
「ふふ……」
そしてペタシリウスはというと、不敵な笑みを浮かべたままこちらをじっと見つめるだけであった。
「――さっきの攻撃、もしや無理やり軌道を変えられたのですか?」
「ええ、そうよ。私の中のグアテガル様の御現身がそう念じたの。だから実行したのよ」
そうあっさり言ってのけるラクシェンヌに、僕は眼を見開く。
「くす、何も驚くことはないでしょう。私たちは人形。愛する人がいなきゃ戦えない奴隷なの。なら……優秀なご主人様の、的確な指示に従った方がいいに決まってるでしょう?」
「それであなたの身体がボロボロになってもですか……ッ!」
「ええ、そうよ。ただそれも本望だけど、これはこれで消耗が激しいの。だからスペアの人形がどうしても必要なのよ」
瞬間、僕は冷や水を掛けられたような感覚に襲われる。
グアテガルという男は、ハツネさんをスペア人形に使う気なのだ。さっきみたいに無理な攻撃をさせ、身体を壊しながら戦わせる。そして最後には、その身体ごと特攻させようとする未来さえ見えた。
そんな邪悪な男がこの世に存在することに、僕は背筋が凍る想いがする。
「さぁ、おしゃべりはここまで……戦いの続きをしましょう。次は、こっちから行くわよッ!」
シュバァッ!
そしてペタシリウスは悪魔のような翼をはためかせ、今度は向こうから襲い掛かってきたッ!
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