第6話 Dパート~大教授・ローラ~
「――ッ! 勇、危な――」
ドンドンドンドンドンドンドンドォンッ!!!
「ッ!?」
すると空から雨が降ってくる。
無論ただの雨じゃない……黒鉄の輝きを纏った、砲撃の雨だった!
ドンドンドンドンドンドンドンドドォンッ!!!
「くっ、な、何が起こって……ぐあぁッ!」
そして僕らはその砲撃を、為すすべなく直撃を受けてしまうッ!
「くっ……」
なんとか致命傷は避けた。だが、ダメージは少なくない。
仕方なく地面に膝を突きながら空を見ると、そこには……大きなスカートを履いた、女の子が浮かんでいた。
「ふむ、止めまでは行かなかったか。中々やるな」
そう冷静に論評する姿を見て、リアナは叫ぶ。
「ローラ!? どうしてあんたまで……」
「おや、そこにいるのはリアナか。まぁ、君は後回しでいい。薬剤がない以上巨大化できないしな」
そして、またもスカートの下面をこちらに向ける。
「まずは……こちらの処理が優先だ」
シュゥ……
まずい……来るッ!
僕は咄嗟に翼を展開する。そして両翼を大きくはためかせ、すぐに急降下の姿勢を取る。
ビュオォォッ!!!
そのまま水面ギリギリを飛行する。ブースターを使って加速し、降り注ぐ爆撃を何とか避けていく。
荒立つ波飛沫をわずかに浴びながら、僕らはなんとか弾幕の中を抜け出したのだった。
「ほう、もう対応してきたか……だが、その次はどうだ?」
「ッ!」
瞬間……天から太陽が陰るほどの大剣が頭へ振り下ろされるッ!
ブォンッ!
「うわっ!」
間一髪、何とかバレルロールをしてメイスの大剣を回避する。
「ぐ……っ!」
このまま地上にいては危ない……そう判断した僕らは、一旦空中へ飛びあがったのだった。
「ふむ、いい判断だ。確かに今はここしかセーフティゾーンがないからな」
そう言って間合いを取った僕らは二人の敵を見る。
メイス、ローラ……どちらもリアナから聞いた、敵幹部の二人だ。
その二人が……まさか同時に襲ってくるなんて。
「さて、遅くなってしまったが自己紹介をさせてもらおう……私は機械星マシルナ大教授・ローラ。今は皇帝陛下に仕えている者だ」
「……なんで、二人が同時に……」
「なに、簡単な話だ。一人より二人……そちらの方が強いのは、君も重々承知だろう?」
それは皮肉交じりの嘲笑。幼げな顔立ちに浮かぶ冷たい笑みは、どこか狂気を感じさせる表情だ。
「ッ、メイス! あんた騎士なのにこんな卑怯な闘い方して恥ずかしくないの!?」
そう抗議の声を上げるリアナに、メイスは冷静に応じる。
「何を恥ずかしがることか。皇帝陛下の勝利は何よりの優先事項……その命令のために冒す手ならば、それは何があっても正道。むしろ、主人の勝利のために殉じることの、何が騎士道に反するのだろうか」
その言葉に僕は衝撃を受ける。
騎士道とは、もっと高貴なもののはずだ。それをあんな風に捻じ曲げて解釈していることへ、僕は背筋に寒気が走った。
だがメイスは誇らしげにまるで鉄塊をそのまま武器にしたような大剣を構える。
「さぁ来い、我らの鋼姫よ。もし地上に降りてきたらすぐにこの剣の錆にしてあげよう……もっとも、その間に撃墜されなければの話だがな」
「ッ!」
その言葉を聞いて、やっとこれが時間稼ぎだと気づく。
しかし空で相対するローラは既に纏った『鋼衣』の装備を展開し、いくつものミサイルの尖端をこちらへ向けていた。
「そういうことだ……悪いが一気に始末させてもらうぞ」
その言葉と同時に、展開したミサイルランチャーから一気にミサイルが射出されたッ!
ドンドンドンドンドォンッ!!!
「く……ッ!」
ヒュウゥゥッ!!!
やむなく僕らは翼を広げ、高速飛行を開始する。
身体が風になるような加速を感じ、一気に青い空を疾り抜ける。
翼で空を切る間に、敵のミサイルがこちらへどんどん迫ってくるッ!
「……ドラゴンアーム、ガトリングモードッ!!!」
僕は両手のドラゴンアームを接続させる。すると爪を形成していた外装が分離し、中からガトリングの銃身が姿を現す。
そして連結させた両手から、ガトリング砲を掃射し始めたッ!
ダダダダダダダダダッ!!!
ヒュヒュヒュ……ヂュドォオオオッ!!!
そして迫りくるミサイルを一発撃ち墜とした! まず一発……ッ!
ダダダダダダッ!!!
僕は狙いを定めながらどんどんミサイルを撃ち墜としていく。二発、三発、四発……ッ! ハツネさんの精度補正射撃によってガトリングの弾はどんどんミサイルに命中し次から次に撃ち墜としていくが、それでも射出されるミサイルの本数に追いつかない。
一発撃墜する度に別の一発がこちらに迫ってくる。空気を尾翼で切り裂いて飛んでくる姿は、まるでミサイルで詰将棋をやらされているよう……ッ! どんどん追い詰めてられていくテラレグルス、そしてついに、撃ち漏らしたミサイルが僕らの背中へ周りこんでしまうッ!
「しまった……!」
だが、急旋回しても今度は前から来るミサイルに追い詰められてしまう。それを避けたとしても、また次のミサイルが……
僕は悟る。もうこれは、”詰み”になってしまったのだと。
「……これで終わりだ」
そんなローラの声と共に、ミサイルが僕らの背中を強襲するッ!
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