第5.7話 Fパート~素直な気持ち~
「うわぁ……」
僕は眼下に広がる光景に、声を漏らす。
夜景に包まれた御影市。空から見るその光景は、心奪われるように美しかった。
「どうですか、勇、綺麗でしょう?」
「うん……すっごく綺麗だ。まさか、自分が住んでる街をこんな風に見る日が来るとは思わなかったよ」
僕らは、ドラフェザーに乗って空を飛んでいた。GV基地から特別に借りた機体で空を飛ぶと聞いた時は驚いたけど、ドラフェザーのコックピットは快適で、そこから見る御影市の夜の姿は正に絶景と呼ぶに相応しかった。
「そうですか、喜んでもらえて嬉しいです」
そう隣で笑顔になるハツネさんは、ドラフェザーを運転している。どうやら『鋼衣』の操作技術は一通り学んでいるらしく、今も簡単に運転をこなしている。そんな彼女の腕前に、僕は素直に関心してしまった。
「……ハツネさん、さっきはありがとう」
そして僕は、ふと言葉を漏らした。
「本当はハツネさんに助けてもらうなんて情けないって思う。でも……ちゃんと僕の気持ちに応えてくれて、すごく嬉しかった」
「当然ですよ。だって勇は私の王子……」
そこまで言ってハツネさんは言いよどむ。そして……
「……大切な、パートナーなのですから」
そう言い直してくれた。
僕は、なんだかそれが嬉しかった。
僕のことを、今負っている役目以上に大切に思っている……彼女がそう言ってくれたような気がした。
手を見ると、やはり今の僕はボロボロだ。あの男たちに付けられた傷が、今も身体中に残っている……けれど、言わずにいられなかった。こんな情けない僕でも、伝えたい気持ちがあって……そして、僕はボロボロになったまま、ハツネさんに告げた。
「ハツネさん、ありがとう……これからも頼ることがあるかもしれないけど、よろしくね」
そう笑顔で言うと……ハツネさんは、少し引き締まった顔になって応える。
「ええ、こちらこそ、よろしく頼みますよ、勇」
笑顔でそう告げてくれたハツネさんは、少し頬が紅かった気がする。
でも、それも気のせいだと思い……僕らは、二人で暗い夜空の散歩を楽しんだのだった。
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