第5.5話 少年、体育祭に挑む Aパート~抜擢~
「はぁ……」
やっと学校への登校許可が出た僕はため息を零した。
イザベラ戦で追った怪我の影響で僕は1週間学校を休んだ。あれだけの怪我をしてこの程度で済んでむしろよかったと喜ぶべきところだが、それでも憂鬱だ。
だって明日は……
「よ、浅谷!」
ドンッ!
そう言って背中を叩いてきたのは木村君だった。
「何だよ、そんな憂鬱な顔してよ! それじゃせっかくのイベントが台無しだぜ?」
「せっかくの体育祭なんだ。目いっぱい楽しまなきゃな」
……
体育祭。
肉体機能障害である僕にとってこれ以上ない憂鬱なイベントだった。
短距離走ではいつも最下位。棒倒しではただ上に載って帽子を取られるだけ。組体操ではいつも倒れる時の始点となっている僕にとって、明日は最悪な日だった。
「……ま、でも一応対策は取ってるけどね」
そう。この日のために僕は今回短距離走にしかエントリーしていない。これにより僕は実質サボリ魔となるが、それでも皆に迷惑を掛けるよりはマシだ。そう考えるだけで僕は心が軽くなり、少しスキップ気味で歩く。
まぁ、そもそもあまり怪我で練習出来てないんだけど、それでも元々期待してる人もいないから気は楽なものだ。僕は少しだけ軽い気持ちで教室の扉を開く。
「……」
……ん?
なんで皆僕の方を見てるんだ? そんな僕の怪我を心配してたのかな?
そんなことを考えながら自分の席に座ると先に来ていたハツネさんがトトト、と僕の席へ近寄ってきた。
「勇、明日はついに体育祭ですね! ともに頑張りましょう!」
「あぁ、うん……ハツネさんはこういう行事好きなんだね」
「当然です、勝負事は全力でやらないと意味がありませんから!」
そう鼻息を荒くするハツネさんに僕は苦笑を漏らす。
「まぁ、頑張ってよ。僕は短距離走にしか出ないから、頑張って応援するね」
「ふふ、そういうと思って、私がサプライズを用意しておきました」
え? サプライズ?
「なんとぉっ! 勇には、団対抗リレーに出てもらうこととなりました!」
……。
………………え?
えぇえええええぇええッ!?
「ちょちょちょちょっと待って!? どうして僕が団対抗リレーに出るの!?」
「ふふふ、実は元々出る予定だったサッカー部の田中君が怪我をしてしまったらしく、3日前に再選考となったんです。このようなリレーで選ばれるのはとても名誉なことだと梶野女史から聞いていたので、ならば是非勇の皆に対する評価を高めてもらいたいと思い私から推薦したんです! すると他にやりたいという方がいなかったので見事代表の座を勝ち取りました! よかったですね勇、これで明日は皆のヒーローですよ!」
そう眼をキラキラさせながら語るハツネさんに、僕は絶望の眼差しを向ける。でも感覚共有してないせいか、僕の気持ちがハツネさんに伝わることはなかったのだった……。
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