間話:伯爵家の恨み(アイラの義姉視点)
「何なのよもう!」
私はお腹の奥で沸々と煮えたぎる怒りをぶつけるように地団駄を踏む。
あの出来損ないが生意気にも充実な日々を過ごしていた。
それだけでイライラしてしまう。
「本当に生意気だわ」
お母様も目に余る程に粗末なアイラの態度を見て、苛立ちを表情に出す。
「あの無能め……」
公爵家からの仕送りがあれば、贅沢な暮らしができる。
今まで野蛮な娘のアイラを家に住まわせていた恩があるはずだった。
アイラがこの家に恩を返せない程の出来損ないとは思いもしない。
「本当に最悪」
しかも、アイラは私よりも高価で華やかなドレスを身に纏っている。
生まれた時から私の方が優れていた。
それにも関わらず、公爵様に気に入られただけで自分よりも良い生活をするなんて到底許せない。
「ルージュ。少し落ち着きなさい」
宥めるように肩を持つお父様は口角を上げて、笑みを浮かべる。
その様子を見て、私は勝ち誇った気分になった。
「伯爵家に恥を塗ったからには、しっかりと教育をしなければ」
いくら生意気なあの野蛮娘にお父様自ら成敗をする。
そんな意思がお父様の目から感じた。
公爵家からの仕送りがないせいで、いつも家計を睨んでいたお父様の目にはクマが浮かぶ。
「明日からは豪勢な暮らしだわ!」
「ええ! 伯爵家に戻ったらパーティーをしましょう!」
「公爵家からの慰謝料で、豪華なドレスを買ってやろう」
お父様から言質を取ると、頭の中には欲しいドレスのデザインが浮かんでいた。
「リストン公爵様がほとんど構ってくれないのに、なんであの娘は……」
「それはルージュの魅力が強過ぎて、奥手になってしまったようだわ」
「そうね! あのアイラが公爵様を味方にできて、私に出来ない訳ないわよ!」
婚約者のリストン公爵様の力があれば、あそこまで私たちをコケにした公爵だってやり返す事ができる。
私はどうあの二人に地獄を見せようか思い浮かべる。
「出来る事なら大勢の前で大恥をかかせてあげたいわ」
いつの間にか頬は吊り上がって、笑顔になっていた。
既に義妹が目尻に涙を浮かべている様子を思い浮かべる。
あの出来損ないが私に勝てる事なんて一つもあるはずがない。
「あの娘が自慢そうに弾いていたピアノで打ち負かしてあげるわ」
「それは良いわね!」
私の方がピアノが弾けるなら、公爵様はあのダメ女を捨てて私に尻尾を振って求婚するだろう。
もちろん既にリストン公爵様がいるから、断らせてもらう。
「すごく楽しみだわ」
それでも、アイラは頼りにしていた旦那様にも裏切られて絶望する。
私の考えたシナリオはかなり面白いものになった。
「私って脚本家の才能があるわね」
私の晴れ舞台を祝福するように星空が煌めく。
あの恩知らずを断罪するステージに王城のパーティー会場は相応しい。
「お父様! 今すぐにあの娘を懲らしめてやるわ!」
賑やかなパーティー会場では調子に乗って話しているアイラの姿を見かける。
あの化けの皮を剥がして、断罪してやろうと私は意気込む。
「あら? 調子に乗ってるようだわね」
公爵様と楽しそうに話している時間を邪魔されて苛立ったのか、アイラは表情を歪める。
「今すぐにアンタの化けの皮を剥がしてあげるわ!」
そう言って王城に飾られてあるピアノを指差す。
「今すぐに演奏をしなさい! アンタよりも私の方が出来ることを証明するわ!」
私の負けるはずのない戦いが始まる。
アイラが悲壮感を漂わせて泣く事が楽しみで仕方なかった。
♢♢♢
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