64.感謝
段々とパーティー会場の雰囲気は温まってくる。
「そろそろプレゼントを贈りましょうか」
ナターシャさんの提案に私は首を縦に振って頷く。
私はベン様を壇上に案内すると、ゆっくりと息を吐いた。
用意したプレゼントは喜んでくれるかどうか心配になってしまう。
「みなさん壇上にご注目ください!」
司会の声と同時に、私は視線をベン様のいる壇上へ向ける。
ベン様の楽しそうにしている様子を見ると、不安は消えた。
もっと喜んでもらいたいという気持ちだけが心の中に残る。
「いつもありがとうございます」
「こちらこそ助かっている。ありがとう」
使用人達は各々で用意をしたプレゼントを渡していく。
ベン様は一つずつ丁寧に受け取っていると、かなりの量になる。
たくさんのプレゼントをどれも大切そうにしまっていた。
ベン様の誠実でマメな性格が現れている仕草はカッコいいと思う。
「アイラもプレゼントをありがとう」
「はい! 大切にしてくれると嬉しいです」
「あぁ。絶対に大切にするさ」
ベン様に頭を撫でてもらうと、やっぱり好きだと再確認した。
「それでは、公爵夫人アイラ様によるベン様への感謝の言葉です」
司会の人の言葉を聞いて、便箋を取り出して封を切る。
ベン様に対する想いが詰まった手紙を丁寧に開く。
ゆっくりと一言ずつ噛み締めるように読み上げると、胸の奥が幸福でいっぱいになった。
「ありがとう」
そう言ってベン様は私を抱きしめる。
伝わってくる腕の力強さは大切にされていると私に実感させた。
「こんな素敵なパーティーを開いてもらえて良かった。ありがとう」
ベン様の一言で締め括られると、パーティーは大成功に終わる。
みんなそれぞれが満足をした表情で片付けをしている様子を見て、充実感で埋め尽くされた。
「泣くほど嬉しかったのですか?」
「別に泣いてないぞ。これは汗だ」
「そういう所だけ意地っ張りなんですから」
ふと、ベン様とナターシャさんの会話が耳に入る。
ベン様はハンカチで目を擦っていた。
「アイラ様は熱心に準備をしていましたよ」
「あぁ。十分に伝わってきた」
そんなやり取りを見ていると、嬉しくて胸の内が熱くなる。
激しく鼓動する心臓を手で抑えながら、安堵の息を吐く。
「喜んでくれて良かった……」
楽しい時間はあっという間に過ぎていた。
気がつくと日付が回る直前の時間を迎える。
「もう今日が終わっちゃう」
そんな事実に寂しさを覚えていると、ベン様が優しく手を握った。
「また明日以降も幸せでいよう」
「はい!」
ベン様に連れられてベランダへ出る。
夜空に吹く風は私に肌寒さを感じさせた。
「コートはいるか?」
「ありがとうございます」
私の体よりも二回り以上大きなコートを羽織って夜空を見上げる。
「綺麗ですね」
ベン様はコクリと頷く。
この星空のように輝いている日々がずっと続いて欲しい。
そんな願いを抱きながらベン様との時間を過ごした。
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