49.ホテルでのディナー

 一通り街を歩き終えると、空は茜色に染まっている。

 いつの間にかベン様は沢山のアクセサリーの入った袋を持っていた。


「ベン様、買いすぎですよ」

「別に金に困っている訳ではない」


 ベン様に似合っていると言われてそのままアクセサリーを購入する事を繰り返す。

 似合っていると言われると嬉しい。

 だけど、一気にたくさんのお金を使うことは未だに慣れなかった。


「でも、ありがとうございます」


 綺麗な貝殻が飾られているブレスレットをジッと見つめる。

 私の銀色の髪に似合うと言って買ってもらった様子を思い出すと、自然と頬が緩む。


「そうか」


 ベン様は照れ臭そうに頭の後ろを掻く。

 そんな様子を見て、この人と結婚できて良かったと心の底から思う。


「今日の楽しみはここからさ」


 そう言ってベン様は大きな建物を見つめて、頬を緩める。

 

「何かあるのですか?」

「ホテルで豪勢なディナーを振る舞われる」

「そうなんですね!」


 ベン様は大きなエビや魚介類のパエリアが美味しいと評判だと呟く。

 話を聞くだけでも美味しそうな料理達をお腹の奥が欲しいと主張してくる。

 そんな事を考えて歩くと、あっという間にホテルに到着した。


「すごく良い匂い……」


 宴会場の外まで届く美味しそうな香りに私の期待感は一気に膨れ上がる。

 会場の奥の方を見つめると、星空を映す海が見える。


「綺麗……」


 綺麗な海に陽気な音楽だけでも十分に満足できた。

 雰囲気を楽しんでいると、ベン様が料理を持ってくる。

 お皿には沢山のエビや貝で彩られているパエリアが大盛りに盛り付けられていた。


「美味しい!」

「あぁ。これは美味い」

 

 一口食べると、スプーンを動かす手が止まらなくなってしまう。

 そんな中で厨房の方から炎が燃え上がる。

 

「豪快だ……」


 私もベン様も視線がオレンジ色の炎に釘付けになってしまう。

 炎の中では私の顔よりも大きなエビが丸焼きしている。

 焼き上がったエビはちょうど良い焦げ色をしていた。


「ん〜! 美味しい!」


 口に入った瞬間に蕩けるエビに私もベン様もホッと息を吐く。


「美味しかったです」

「あぁ。絶品だった」


 幸せすぎる時間を過ごしていると、陽気な音楽が流れてくる。

 みんなの視線の先には何人もの女の人が楽しそうに踊っていた。


「あら? お嬢ちゃん」


 そんな中でダンスをしているお姉さんが私の方へ向かってくる。

 お姉さんは花で出来た髪飾りを頭から取った。


「プレゼントよ」


 そう言って髪飾りを私の頭にそっと付ける。


「良かったじゃないか」

「はい!」


 音楽に合わせて揺られながら踊りを見つめている時間はとても幸せに感じた。

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