30.友達
ベン様が手を叩くと、意識は音の方向へ向く。
「それじゃあ、アイラを各々で練習をしていこう」
「はい!」
元気の良い返事がホールに響いた。
そのまま、みんなテキパキと楽器を持って移動をする。
「アイラさん!」
私は何をすれば良いのかわからず、ピアノの椅子に座っていた。
そんな中でジュルアさんが私の方へ駆け寄る。
「あ、あの……もし宜しければ、一緒に練習しませんか?」
「もちろんです! よろしくお願いします!」
私はそういうと、ジュルアさんの表情は一気に明るくなった。
「はい。よろしくお願いします」
どこを演奏するかすり合わせを終えると、ジュルアさんはヴァイオリンを構える。
それを見て、私は意識をピアノに向けた。
「では、行きます」
合図と同時にピアノとヴァイオリンの音が同時に響く。
前までは一つの楽器での演奏しか知らなかった。
だけど、今演奏している音はそれを遥に超える感動が私の中に流れ込む。
「完璧でした」
「ありがとうございます!」
たった数分演奏するだけでも、興奮は一気に最高潮まで達する。
「ジュルアさんはとても繊細ですごい演奏をするんですね!」
「ありがとうございます……」
興奮気味で褒めると、ジュルアさんは恥ずかしそうに笑う。
「アイラさんこそ、とても強く芯のある演奏が素敵でした」
「えへへ。ありがとうございます」
ジュルアさんに褒められると、私も照れくさくなってしまった。
「もう一回お願いします!」
「はい! こちらこそ」
ジュルアさんにギラギラと輝いた目線で見つめられると、私もやる気が湧いてくる。
「じゃあ、始めます」
お互いに目を合わせると、音色も同時に合う。
綺麗に重なる和音は練習場を綺麗に彩る。
ジュルアさんの呼吸を感じながら、歩調を合わせていく。
「最高です!」
「はい!」
一曲を弾き終えると、お互いの体に満足感が駆け巡る。
私はジュルアさんに手を出すと、パンと気持ちの良い音が響く。
「もし良ければ、アイラって呼んでいいかしら?」
「もちろん! 私もジュルアって呼んで良い?」
「ええ!」
ジュルアは気分よさそうに私の名前を呼ぶ。
そんなやりとりにジュルアが友達に見えてきた。
「これって友達なのかな?」
「私はさっきから友達だと思ってましたよ」
ジュルアを見ると、何気ない表情をしている。
今まで友達と呼べる人は居なかったから、友達と呼ばれると新鮮な気分だった。
「うん! 私達は友達だね!」
「はい!」
そんな様子に私も笑顔で返す。
初めての友達に私は心の中でぽかぽかとしたものが浮かぶ。
「そんなに嬉しいのですか?」
「もちろんだよ!」
「そう言われると、照れてしまいます……」
ジュルアは恥ずかしそうに頭を掻く。
「それじゃあ、一緒に演奏しよ!」
「もちろんです!」
そう言って、私達は音を合わせた。
♢♢♢
「続きが気になる!」「アイラちゃん良かったね!」と思っていただけたのなら、フォローと下の☆☆☆を★★★にして応援頂けると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます