第3話 予知夢のアンセム
まず回避するべきはアンセムとの出会いである。
彼はエドウィン殿下の側近で、宰相も務める公爵家の長男だ。
学園内では生徒会の会長をエドウィン殿下が、副会長をアンセムが担っている。
今日は忙しい殿下の代わりに婚約者のお出迎えをするため、彼がエントランスで待機しているはずだ。
そして入学式が
何だったかしら?
あぁ、横から走ってきて
それで彼女が足を
よく考えると追突してきたパナピーアが悪いと思うのだが『女性に優しく』と、幼少期より厳しく躾けられてきたアンセムだ。
見た目に何の被害も受けていないかのように虚勢を張って立っていたアデリアーナより、派手に転んで痛がっているパナピーアを優先しても仕方なかったのかもしれない。
しかもパナピーアは『痛い、いたい』と騒いでケガのアピールまでしていた。
今なら相手のずる賢さが一枚上手だったと分かるが、当時のアデリアーナやアンセムのような良家の子女では知りえない世界だったことは確かだ。
アンセムは良くも悪くも律儀で融通が利かない。
そこが彼の長所でもあると知っているアデリアーナとしては文句が言いにくい点でもある。
もしかして、
いえ、違うわね。
あのぶつかり方を考えるに、勢いが殺せずもっと派手に転んでいた可能性が高いでしょう。
そうなると避けたらよけたで、更に
あれこれ考えているうちにもう馬車は学園に到着してしまった。
玄関前のエントランスには夢と同じようにアンセムの姿がある。
「ごきげんよう、アンセム様」
「ごきげんよう、アデリアーナ様。殿下に急用が入り予定が変更となりまして、
「ご連絡いただき、ありがたく存じます。お手数かけますがよろしくお願いしますわ」
このやり取りも夢と同じで、やっぱりあれは予知夢なんだとアデリアーナは肩を落とした。
学園内と言っても王太子殿下の元へ案内無しで行かれるような事はない。
アデリアーナはアンセムにエスコートされて学内を歩き始めた。
このあと校舎の廊下であの出会いが起きると知っている彼女は、何とかその廊下を歩くまいと知恵を巡らせる。
そんな彼女がふと見れば、左側に池がある。
たしかこれを回り込むように遊歩道があるのを思い出した。
あの道を歩けば例の廊下は通らなくて済む。
最悪もとに戻って来たとして、時間が違えばパナピーアと鉢合わせるタイミングがズレて出会わないかもしれない。
良い思い付きだとばかりにアデリアーナの顔が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます