ようこそ、異能部へ!(4)

 たった三人の新入生だ。クラス分けなどあるはずもなく、そのまま全員、同じ教室へと案内された。

 広い教室に三席横並びに置かれた机が、より一層寂しさを際立たせていた。三人はそれぞれ指示された席に着席し、今後の授業割りについてなど、担任教師から話を聞いた。


 ひととおり話を終えた教師は、本日はもう終業だと伝え、各々好きに学園内を回ったり、寮でのんびりするといい、と言い残すと、教室を出ていった。


 せつなは教師から配られたプリントを見ながら、右隣に座るくるるに、


「ね、なんか色々部活があるみたいだけど、くるるちゃんはどこに入る?」


 と、話しかけた。


 聞かれたくるるは、「部活かぁ……。なんか、変わった名前が多いよね。どこがいいんだろう……?」と、悩み出した。


 真剣にプリントとにらめっこしているくるるを、せつなは微笑ましく眺めつつ、今度は、左隣に座る吊り目の少女に話しかけた。


「ね、あなたは何か気になる部活、ある?」


 吊り目の少女は、窓の外を向いたまま返事をしない。


「ねーえ、部活なんだけど!」


 吊り目の少女は、なお無視を続けている。


「……ツインちゃん! わたし、ツインちゃんに話しかけてるの!」

「あーもうっ! 気づいてるわよ! 気づいててムシしてるんでしょ! ってか、アタシはツインちゃんじゃない!」


 先に根負けしたのは、吊り目の少女のほうだった。

 吊り目の少女は立ち上がり、せつなとくるるを見下ろして、言う。


「いーい? アタシの名前は、白咲茉莉しろさき まつり! 茉莉様と呼びなさい!」

「わかった! よろしくね、茉莉ちゃん!」

「わたしは、小熊おぐまくるるです。よろしくお願いします、茉莉さん」

「アンタら、全力で無視してくれるじゃない……」


 無視の面でいえば、さきほどの茉莉の行動もあるのであいこといえよう。


 再び茉莉は席につくと、二人にこう言う。


「いい? そもそもこの学園ではね、自分で自由に部活を選べないのよ」


 茉莉の発言に、二人は目を見張った。


「入学のしおりに書いてあったでしょ。部活は、それぞれの能力によって割り振られるって」


 そんなところまで読み込んでいなかったのだろう。二人は口を揃えて、「ええっ!?」と、驚いた。


「そんなことも知らないのね。いい? 割り振りは生徒会長が――」


 そのとき、ガラリと扉が開いた。

 そこにいたのは、入学式で見事なスピーチをしてみせた生徒会長、王樹華乃おうじゅ かのだ。


「ごきげんよう、みなさん。よかった、まだここにいたみたいで……あなたたちの所属する部が決まったから、伝えにきたのよ」


 生徒会長の登場で、教室内は一気に緊張が張り詰めた。内から滲み出る、絶対的自信と他者を圧倒するオーラは、トップに君臨する者の力を如実に証明していた。


 生徒会長は持っていたファイルから紙を取り出し、それぞれ一枚ずつ、三人の机の上に置いた。その紙には、『入部任命書』と書かれている。

 華乃はそれを配り終えると教卓の前に立ち、ひとりずつ視線を送りながら、任命書を読み上げはじめた。


「保健部、小熊くるる」


 くるるは、紙から顔を上げ、生徒会長を見た。


「生徒会、白咲茉莉」


 茉莉は、紙に書かれた文字を見つめている。


「最後に、異能部――尾張おわりせつな」


 せつなの目に、ひとすじの光が差し込んだ。


「――以上。あなたたちに、この部へ入部することを任命します。それぞれの部で切磋琢磨し、成長できるよう、応援しているわ」


 最後に華乃は、「その入部任命書は、今日中に各部の部長へ提出するように」と、補足した。


「白咲さんは、わたくしといっしょに来なさい。生徒会室へ案内するわ」


 茉莉は「はい」と返事すると、華乃とともに教室を出ていった。


 残された二人は、互いに顔を見合せた。


「じゃあ……とりあえず、言われた部室へ行ってみよっか?」

「そうですね。保健部の人、優しい人ばかりだといいなぁ……」


 こうして、二人もそれぞれ与えられた部へと向かったのだった。

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