06 ゲームをした件

「いっけえ! そこだあ!」

「よっ! はっ!」


 メイは軽やかなコントロールさばきでゾンビを倒していく。どうやら相当やりこんでいるらしい。エクストラハードモードだしね。


「わあ、凄い! 凄いよメイ!」

「そんな風に褒めてくれるのは由香だけですよ」


 会話をしながらも、メイの指は止まらない。兄ともこんな風に、ゲームをしていた頃があったな。あ、あたしはプレイしないんだけどさ。見るだけ。


「ねえ、メイって翼生えたり使い魔呼んだりできるの?」

「いえ、そんなことはできませんよ。どうしてです?」

「ゲームで出てくる吸血鬼って、大体そんな感じだから」


 メイは困ったように笑いながら、群れで現れたゾンビ犬を蹴散らしていく。


「実際の吸血鬼って、ものすごく地味ですよ。ただ死んでて、ただ血を吸うだけですから」

「そんなものなのね」


 本人が言っているのだから間違いないだろう。あたしは質問を続ける。


「十字架とかニンニクは苦手?」

「平気です。昨日の料理にも、ガーリックパウダーを使いました」

「じゃあじゃあ、何が苦手?」

「直射日光はダメですね。目眩がします」


 それって貧血の人と同じ気がするが、別に言わないでおこう。

 しばらくゲームをしていたあたしたちだったが、昼ごはん時になったので、コンビニへ行くことにする。

 メイはキャップをかぶり、サングラスをかける。むしろ、それくらいのことで日光は何とかなってしまうらしい。


「わあ、コンビニコンビニ」

「そんなに嬉しいですか?」

「うん、あたしコンビニ大好きなの」


 あたしは真っ直ぐにパスタのコーナーへ向かい、ミートソースにすることを決めた後、すぐにそれを取らずに、コンビニを一周する。

 雑誌、飲料、お菓子。コンビニは見て回るだけで本当に楽しい。

 あたしたちはパスタとポテトチップスを買い、部屋に戻る。パスタを食べたら、ゲーム再開だ。


「今度はこれにしましょうか」

「ファイクエ10? それ好き! お兄ちゃんと三週くらいやったよ!」

「では、別のにしますか?」

「ううん、それがいい! どこまで進んでる?」

「ヒロインが攫われて助けに行くところです」


 あたしたちはRPGを始める。ポテチをぽりぽり食べながら。

 そうして、主人公とヒロインが愛を確かめ合う壮絶に感動するムービーを終えた後、メイが一旦セーブする。


「そろそろ、夕食の支度をしないと。礼が帰ってくる頃です」

「えっ、もうそんな時間?」


 窓の外は、もうすっかり暗くなっている。


「今夜も鶏肉ですけど、いいですか? 冷凍したものが沢山余っているんです」

「もちろん! メイの料理なら何でもオーケーだよ!」


 あたしはテレビを見ながら、呑気に夕食ができるのを待つことにした。

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