第13話 好きとは?

彼は、台風みたいな人だ。


勝手に勢いよくやってきて、自分が満足したら帰っていく。


つくづく、いなければ平和なのに。


振り回されている気持ちになってしまう。



好きとは。


「好き」って感情は普通、もっと相手のことを知りたいと思うのだと思う。


でも、あいつは向こうから勝手にやってくる。


聞いてもいないのに一方的に全部話してくる。


そこが安心感に繫る部分も大きいけれど、私のみならず、

周囲に対しても「俺こうなんだよね」と話すタイプの人間だ。


自分の話をされても大して興味がないのに、周りが彼に合わせて大人の対応をしている風に見える。




週2で通っているトレーニングジムがある。


教えて貰っているトレーナーがよく話す人で、たまに私の悩みも聞いて貰っていた。


「男も手放しなくないんだろうな」


そのトレーナーも私のことはよく知ってくれている存在で、分かってくれている感はある。


彼にも昔好きだった相手がいるけれど、今は恋愛感情とかは一切なくて、「本当に好きな相手には俺じゃなくても幸せになって欲しい」と言っていた。


それを聞いて無駄に歳を重ねていないな。と思った。



彼はこんな人だということを話した。


「しょーもな」


そう言ってくれたおかげで、吹っ切れた気がした。



タイミングを見計らって、別れ話を切り出した。


自暴自棄になって、なにもかもがどうでもいいとさえ感じた。


初めは理解して貰えなかった。


でも、度々話し合ったこと、旅行へ行った時に揉めた出来事、なにもかもお互いが無理で別れたいと思ってしまっていたこと。


別れはつらいけれど、2時間半の話し合いの末、双方納得して別れることになった。


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