第11話 好きじゃない
家でもずっと一緒で、職場も一緒なのが私にとってはツラかった。
同じ職場には大学生くらいの若くて可愛い子がいて、彼は自ら積極的に話し掛けるタイプだ。
「大丈夫?」とか「忙しかったね」と女の子に自ら声を掛けるタイプで、その声掛けも過剰な気がしてしまう。
普通に話し掛けるんだと思ったし、何も感じないわけではなかった。
でも、そういう人だって理解しているからわざわざ嫉妬なんてしていなかった。
ただ普通好きだったら嫉妬するものなのだろうな。と、俯瞰的にそう思った。
「職場で俺が他の女の子と喋っていたら嫉妬する?」と向こうから言われて、嫉妬すると言って欲しいのだろうな。と察するから「嫉妬する」と言ったら、「そんな風に見えないけどな」とか、「可愛いやん」とか言いながら、まんざらでもなく嬉しそうだった。
私は「好き」が分からなくなっていってしまっていた。
彼と一緒にいて、好きじゃないと思うことが増えてきてしまった。
他の子はどうなのだろう?と彼氏持ちの子に聞いてみたり、恋愛のことをネットで検索することが多くなった。
みんなそんなものなの?
彼からは「好きが安心に変わる」と言われて、それはまったく同感だったけれど、特別会いたいとも思わなくなった。
「それでいいんじゃない?」という友人もいたし、「その感情は普通ではない」とか、「さっさと別れたら?」という意見もあった。
一緒に居て当然かもしれないけれど、飽きた。という感覚が近いのかもしれない。
人に対して飽きたなんていう感覚、失礼というか最低な気もしたし、別れた方が良いと思う反面、気持ちが曖昧で確かめられずにいた。
◇ ◇ ◇
私の態度が相手にも伝わって、「しんどいの?」と言われることが多くなった。
元々、何をやっていても疲れやすく、一日中外に出歩いていると、すぐに疲れてしまう。
甘えだと言われるかもしれないけれど、活発に動きまわることがしんどい。
だから正社員のようにフルタイムで働けないし、短時間のアルバイトをして繋いでいる。
体力的にしんどいのは事実。
でも、貴方といるせいでもっとしんどい。
でも、どうやってそれを伝えたら良いのか分からないから苦しんだ。
「生理前でしんどい。苛々して当たったらごめんね」
そう私なりに伝えているつもりではあったけれど、なかなか理解して貰えなかった。
「それってずっとしんどいの?」
酷い時は、横になっていないとしんどい時もある。
体調に波があるのも当然なのに、理解して貰うのは容易ではなかった。
「どうしんどいの?」
「どうって……」
付き合って初めての女の子の周期に差し掛かって、もっと早めに言って欲しい。とか、どうしんどいのか分からないだの、とにかく追及される感じが心理的に負担になる。
「もっと前もって言ってくれないと俺わかんないんだけど」
……そりゃ分かる訳ないだろ。
仮にもこれまで女の子と沢山付き合ってきたはずなのに分からないの?
今までどんな女の子と付き合ってきたの?
ますます彼のことが分からなかった。
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