第7話 カップルの私生活

彼氏ができて、一緒に住んでいると周りに伝えると驚かれることが多い。


一人暮らしの女の家に転がり込んだ身ではあるけれど、負担にならないように気は使っているのを感じられるからこそ、余計に気を使ってしまう。


荷物で私の部屋のスペースを邪魔しないようにとか、料理や片付けなどは率先してやってくれたり、お金は出してくれるとか。


周りから見ると、「いいじゃん」って言われることしかないはずだったのに。


なんだか心から喜べなかった。




2人ソファに並んで部屋が暗くなるまでゲームをして、セックスをして、そのあと近くにある中華料理を食べに行って、シーツが汚れたから洗濯しにコインランドリーへ駆け込んだ。


よくある同棲カップルの幸せな日常生活。


YouTubeやドラマ、小説などで見ている分にはいいなぁ、とか、羨ましくもあり、幸せな気持ちになれるのに。


いざ自分がその立場になると、なんだか望んでいなかったのかもしれないことに気が付いた。




私自身が彼がなんでも全部やってくれることを求めていない気がしたから。


愛が欲しかったし、抱きしめてくれる人がそばにいることはとても幸福なことだった。


でも、私はこうした一般的な幸せを求めていない気がした。




同棲中に二泊三日の旅行に二回も行って、ずっと彼と時間を共にしていた。


私は一人でいる時間がないと無理だけれど、彼は、ずっと一緒にいたいタイプだ。


本人は口にしないけれど、寂しがりやなのだと思う。


誰よりも弱い存在だから認めて欲しいだけ。


表面では強がっているけれど、誰よりも繊細で、ナイーブなのだと思う。


だからこそ、家では物凄く甘えてくる。



彼が目の前にいると抱きつきたくなって、つい甘えてしまう。



外でいる時の彼の姿は、頼りがいがあって、店員さんや他者に対しても優しくて朗らかな姿が好きだ。


でも家の中での彼があまり好きではない。

「いつまでも男女の関係でいたい」という言葉とは裏腹に、いつもズボンを脱いで、私のお気に入りの二人掛けの座り心地の良いソファを占領して、酒を飲みながらスナック菓子を食べて、リラックスしてゲームをしている。


それがなんだか空間を占領された気分になってしまう。



大した問題ではないのかもしれないけれど、同じ空間にいて自然と目に入ってくる光景や生活音、相手のちょっとした癖が気に入らないと、どうしても気になってしまう。


トイレやお風呂に入っている時が唯一、一人になれる空間で、自分の部屋なのに落ち着かなかった。


彼の物が増え、ゲーム(手に入るのが難しいと言っていたプレイステーション5、Switch、リングフィットアドベンチャーなど)やUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみ、イタリア料理に関する本、彼の服などが部屋を占めていった。

 


自然とミニマリストで生活していた私にとって、物が増えていくことが想像以上にストレスとなっていった。



物だけならまだしも、それがやがて精神的ストレスに繋がっていった。



外に出ようとも、常に一緒に行動したがるタイプだったので、窮屈で逃げ場がない感覚に陥った。


「束縛したくない」と本人は口にする。


あくまで「心配だから」。


まるでこちらに非はないように持っていかれる。


それが心理的負担になる。

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