第5話 二人の関係性
「バー行く?」となって、再びウロウロしていたけれど、開いているところがどこもなくて石井さんが詳しいという天王寺あたりまでタクシーで移動することになった。
移動しながらも、何軒も連れて行ってくれるけれど、こんなのも初めだけなのかなぁ、と思って、ただ彼についていった。
あべのハルカスのシティホテルに入っている、綺麗な夜景が見えるバーに行った。
エレベーターに乗って、上まで上がる途中、持っていた鞄を持ってくれた。
私は、鞄を持ってくれる男の人が初めてで、世の女性は優しくされて、こんな気持ちなのか。とさえ思った。
お洒落な雰囲気のバーなんて一人じゃとても敷居が高かったけれど、二人だったのでなんとか大丈夫だった。
決して安くはない値段のスパーリングワインとチーズ盛り合わせ、アラカルトをオーダーした。
普段着の私は上からストールを羽織って、なんとかカジュアルさを隠した。
窓から見える高層階からの夜景は、あたり周辺が見渡せて綺麗だった。
途中、なんでこの人は私と長時間一緒にいてくれるのだろう?という気持ちになった。
でも、こっちをじっと見つめる眼差しが真剣で、本気なんだな。ということだけは伝わってきた気がする。
閉店の時間となって、かなりお腹も満たされて、店を出ることになった。
深夜1時に差し掛かっていた。
こんなに遅くまで飲み歩くのはかなり久々で、こんなこと滅多にないからたまにはいいか。という気持ちでいた。
話したいことがあるみたいだったので、マックへ入り、ホットのカフェラテを注文した。
2F席に座り、向かい合わせになって少し話をした。
恋愛のことを徐々にさらけ出してきて、彼は、改めて彼女とは縁が切れていることをしっかりと伝えてくれた。
彼の話を聞いていて、心が動かされるのが分かった。
「分かってる?」と念押しされた。
でも、私は「ハッキリ言ってくれないとわかんない」と言った。
「つまり彼女より優先したってこと」
熱意は十分に伝わってきた。
なんだか、こんなにも真剣に向き合ってくれる人、なかなかいないと思った。
*
再び店を出て、歩いた。
駅とは逆方向へと向かって行った。
どこへ行くのかなーと、ただただ彼についていった。
でも、時間も時間だし、良さげなお店が見つからず、二人でずっとウロウロしていた。
歩きながら、私がさっき打ち明けた悩みを解決するという意味合いで
「俺は、一緒にご飯行ってるだけでも楽しいし、好きってことだと思う」
そう告げられた。
天王寺のキューズモールの近くの交差点。
立ち止まって、黙って彼の話に耳を傾けた。
……くる?くる?と内心は心臓がバクバクするほどドキドキだった。
だから、付き合ってみれば良いんじゃないかな。
「俺もう、愛莉ちゃんのことが気になっているんだと思う。
だからその……良かったら付き合う?」
探り気味でそう告げる彼。
「なんなの、それ」
思わず、不服そうに返事した。
改めてちゃんと告白させたという形に近いかもしれない
「付き合ってください」
そう言ってくれた。
でも、言わせておいて返事にためらっていた。
私が言いよどんでいると、彼の方から「振られる?……振られる?」と催促された。
彼に職場が同じだから周りの目とかもあって気まずくなること、飽きられるか不安なことをそのまま伝えた。
でも、返ってきた言葉は、なんの心配もなさそうに「そんなの関係ないよ」ということだった。
「俺が飽き性だって言ったから?」そう心配させたけれど、
とにかく断る理由もないと思ったから、
「お願いします」
そう告げた。
「本当に?」
驚かれたけれど、私も嬉しい気持ちでいっぱいだった。
きっと、この瞬間はいつまで経っても忘れることはないだろう。
正直、この年齢になって、こんなに段階を踏んで男性と自分がお付き合いできるなんて思いもよらなかった。
念願の彼氏ができた……!
表にこそ出さなかったけれど、内心かなり舞い上がっていた。
改めて「よろしくお願いします」そう言われた。
二人で駅まで向かい、タクシーに乗り込んだ。
それから「なんて呼んだらいい?」というところから始まって、
彼は下の名である秀明と呼んで欲しいと言われ、私は愛莉ちゃんと呼ばれることになった。
帰り道、タクシーの中で初めて手を繋がれた。
家まで送ってくれる間、窓の景色をただ眺めていた。
*
無事に自宅まで送り届けてくれた。
その後、LINEが入ったり、電話が掛かってきたりして、お互いの誕生日を知るところから始まった。
家に帰ったあと、彼からLINEが届いた。
「今日は遅くまでつれ回してごめんね。
一緒にいれた時間楽しかったよ~
それと、付き合ってくれるって言ってくれてありがとう!
これからは好きになってくれるように頑張るな!
一緒に出掛けたり食事行ったり話をしたり、色々楽しいことしていきたいね。
あと、言いそびれたけど、
おれは愛莉ちゃんの人に思いやりがあって優しいところと、声と、笑
なんか人を気にさせるツンデレなところが好きやで!」
LINEでそう言ってくれたのが嬉しくて、スクショを撮って残してある。
私は、今まで自分に自信がなかった。
そんな私を好きだと言ってくれる人ができたことが、ただただ嬉しかった。
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