曇りだって笑えばいい

@mamekuro

歳月は人を待たず

 気が付くと50代、私も立派な中年の仲間になった。

細かく分類すると「おばちゃん」と呼ばれる女性なのだが、この言葉を受け入れるまでに長~い心の葛藤があったのも事実。

世間では厚かましいとか、姦しいとか、マイナスイメージばかりの「おばちゃん」に自分が仲間入りしてしまうなんて笑ってしまう。


おばちゃんは自然には成れないし、慣れないのだ。


 さて、この呼び名が曲者だと感じたのは、甥や姪が誕生し、親族から「おばちゃん」と呼ばれ始めた頃。

「叔母・伯母」に親しみを乗せて呼んでくれるのは分かる。しかし、大多数の人はそのころ約20代、モヤモヤする心と、甥・姪の可愛さの狭間で揺れ動く気持ちを、強制的に押さえつけ、仕方ないからと「おばちゃん」を受け入れる。

これが初期要認期。新おばちゃんの誕生、おめでとう。


 なんて、冷静に分析しているようだけど、この頃の気持ちは本当に複雑だった。

呼ばれ慣れてない名詞に違和感ばかり、「おばちゃん」の前に名前や可愛い単語など付けて、何とかストレートに呼ばれる衝撃を緩和しようと努力する。

中には断固として名前呼びを強要する方も少数いるとは思う。

身に覚えのある方、はい、挙手!


 時間の経過とともに甥や姪が増え、広がる「おばちゃん」呼び。

結婚し、子供が生まれ、お友達やその母親から呼ばれるのは、やはり「○○君のおばちゃん」

自分の事を「おばちゃんね…」と、日常的に言い始めるのもこの頃。

違和感を感じなくなるこの頃が中期容認期。おばちゃん自己認定。


 社会に出て、世間に揉まれ、人の温かさ冷たさ、理不尽を経験し、夫・子供・親族にも翻弄され、ママ友という輪もくぐり抜け、経験値が積み重なっていく。

人生は障害物競走!順調に幸せだけ感じるなんて天文学数字分の一人か二人。

可愛いと控え目だけでは世の中渡ってゆけないと気が付き、自己を全面に出す術を学んだおばちゃんは勇者レベルで強い。

バーゲン?旅行?パート?PTA?培ったスキルは発揮しなければ損。

人生の全面に「おばちゃん」を発揮するようになると…

おめでとうございます。立派な完成形おばちゃんでございます。


 でもね、良くも悪くも図々しくなっていくのは経験から学んだからであって、後天的な物なんだよ。決してこれが素なんだと信じないで欲しい。

そして、女性が全員おばちゃんに進化するとは思わないでほしい。

おばさまもいるし、奥様もいるし、極々まれに同じ年なの??と驚くくらい美しい

お姉さまもいる。

 

 忘れて欲しくないのは、心の中では可愛い部分は生きている、控え目な部分が隠れている、本当は、おばちゃんの心は本当は乙女なんだよ。


決して言い訳しているわけではないけど、辛い事を乗り越えるために、あえて笑っている人だっている、陰で努力している人もいる、頼れる人もなく耐えている人もいる。

「おばちゃん」の呼び名は、それを前面に出して自由に動き、心を守るための鎧なのかもしれない。

次々に訪れる人生の岐路を、豪快に乗り切るための守りかもしれない。

そう思うと「おばちゃん」だって愛おしい。



 これから、私の「おばちゃん」は「おばあちゃん」移行していく。

ここにも葛藤があるのか?ないのか?

嫌がったところで時間は過ぎてゆくのだから、今度の変化は何だろうかと、楽しみに待つことにしよう。

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