第054話 何を強化する訓練なんだこれは!?
―パフパフ
両側から定期的に大きなマシュマロに挟み込まれているような感覚を覚える。
ぐわぁあああああああっ!!
俺は下半身の封印を解くその魔法に心当たりがあり、全身に稲妻が走った。
こ、これはまさか伝説のパフパフというやつではないのか!?
しかも両側から包み込まれているということは、伝説を超えた伝説、つまりダブルパフパフ。こんなことがあっていいのだろうか!?
俺はこんなところで男のロマンの伝説の技がくりだされるとは思わず、ダブル想像術は霧散し、封印を完全に解かれてしまった。
「ぷはーっ。すぅ~」
さらに、あまりに衝撃的過ぎて止めていた呼吸も限界になり、目一杯その空間に溢れている空気を吸いこむこととなった。
その空気はいつも感じている二人の匂いと同時に、少し動いたことによって上気した体から発せられている少し甘酸っぱい匂いが、溜まっていたらしい布団の中から漂ってきていて思いきり鼻の中を駆け巡る。
それにより見えない顔の両側の刺激が正体がより鮮明となり、俺に襲い掛かってきた。
もう俺にはその暴力的な感覚に逆らうことはできなかった。そのせいで俺の下半身ドラゴンの封印は解け、完全に目を覚ましてしまった。
四月後半で避暑地にあるためか肌寒いくらいの気候のため、毛布と掛け布団を掛けているので外からドラゴンを確認することは出来ないが、二人はすでにその布団の中に潜り込んで密着している。
これではいつ体のどこかが目覚めた俺のエンシェントドラゴンと接触してバレることになるのか分かった物ではない。
絶体絶命の大ピンチだ。
ただ、そんな状況にも関わらず、俺の頭にはふと大きな疑問が浮かんだ。
そもそもこれは何を強化のための訓練なのか……と。
訓練とは言われていたが、この状況で寝ることが何に繋がるというのだろうか。
強いて挙げるとすれば、女性からの色仕掛けに負けない鋼の精神力を身に着けるとか、興奮した精神状態を落ち着ける精神のコントロール能力を身に着けるとか、そのくらいだ。
それが一体どう悪霊とつながるのかが全く分からない。
でも、強化とは全く関係ないが、思い当たることがないわけではなかった。
それは、今封印から目を覚ましたばかりで猛り狂っている下半身のドラゴンのことだ。疲れているせいか、はたまた朝だからか、ドラゴンの体は異常に硬くなっていた。
こいつは帰ってきてからというもの全く制御不能になってしまっている。しかし、それは今まで隠してきたはず。バレているはずがない。
現に來羽にはバレていない、というか彼女は何か分かっていないと思う。授業中に触られてしまったけど、彼女はそういうことには本当に無知らしく、全く何を言われるでもなかった。
と、なると、考えられるのはすみれさんの方。
唐突に顔から柔らかな感触が消える。
俺は不安になって恐る恐る目を開けた。
数十センチ先にはニッコリとした笑みを浮かべているすみれさんの顔がある。彼女の口がゆっくりと動き、言葉を紡ぐ。
しかし、鼓膜を破壊したため、何を言ってるのかは聞こえなかった。ただ、異世界で鍛えられた俺の眼にはハッキリと言っている内容が見て取れた。
『固くしちゃって……エッチなのねぇ、泰山君は』
それに俺は完全に理解した。
俺の体のことが完全にすみれさんにバレてしまっていることを。
そして俺が目だけでその言葉が理解できたことも、俺が驚愕を表情を浮かべたことで理解しているみたいだった。
その直後、滑り込むようにして潜り込んできた感触が下半身に到達し、そのまま俺のドラゴンへと這い寄っていく。
「止めてください……」
『だーめ♪』
何をされるのか分かった俺は止めさせようと声を出したが、すみれさんの口はそう形づくっていた。
次の瞬間、俺の下半身で怒り狂ったドラゴンの首を思いきりギュムッと掴まれた。
―ビクビクビクンッ
その刺激に耐え切ることはできず、俺は体を震わせ、体内に溜まっていた毒を吐き出すことになってしまった。
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