第051話 部屋割り
「うわぁ……!!」
「こういうの憧れるよなぁ」
「分かる」
コテージの中に入ると、木がむき出しになった造りになっていて、まるでキャンプしているわけじゃないのにキャンプしているような非日常感というか特別感があった。
大自然の中で家族でこういう家に住んでひっそりと暮らすのも悪くないと思わせられる。
妹は中には入るなりその屋内の雰囲気に目を奪われ、來羽は同じ気持ちになったらしく俺の言葉に同意して頷いた。
「ほらほら、立ち止まってないでついてきて。中を案内するわ」
いつまでもやってこない俺達に呆れたすみれさんの催促に従い、俺たちは靴を脱いで室内に上がる。
コテージの中を見て回った結果、電気・ガス・水道は通っているし、キッチンやトイレやお風呂、そして家電なども完備していて、生活するのに何も困ることはなさそうだった。
個室は二つあって、その二つで分かれることになった。
「私はお兄ちゃんの妹だから当然一緒の部屋だよね!!」
「私も泰山とは仲がいいから一緒の部屋で構わない」
「はぁ……しょうがないわね。ここは正々堂々くじ引きにしましょ」
「むっ。仕方ありませんね。それでお願いします」
「分かった」
部屋割りは順当にいけば俺と蛍が同室になるはずだったが、何故か來羽も俺と同室になりたがったせいでくじ引きをすることになった。
「俺の意思は――」
「決定だから」
「あ、はい」
完全に俺は置いてきぼりになっているので、「高校生の男女が同じ部屋で寝るっていうはダメじゃないか?」という話で口を挟もうとしたが、食い気味に返事をされ、その威圧感に俺は何も言えなくなってしまった。
「私の勝ち」
そして、厳正なるくじ引きの結果、俺と同室になったの來羽だ。
「そんなぁ~」
「ざぁんねん!!」
すみれさんと蛍が悲痛の叫びをあげる。
ちゃっかりすみれさんも参加していたらしい。全く興味なさそうにしていたのに実は興味があったようだ。
しかし、すみれさんが同室じゃなくてよかった。
蛍も妹も幼い体形をしているが、すみれさんはとんでもなく美人で一人だけスタイル抜群だ。そんな彼女が同じ空間の中に一緒にいたら理性が崩壊してしまうかもしれない。
俺は心の底から安堵した。
早速俺たちは持ってきた荷物を部屋に持って行った。
「おぅ……ベッドが四つ……ってこれってわざわざ部屋を別に分ける必要もなかったのでは?」
ただ、室内に入ってから気付いたことだが、個室にはベッドが四つあり、全く部屋をくじ引きで決めた意味がなかった。
勿論すみれさんや來羽とも一緒になるの生活では全く気が休まらないため、今の状態で落ち着いたことは幸運だ。
「あぁ、やっぱり!!」
しかし、俺の幸運は長続きすることもなく、部屋へとやってきた小さな侵入者によって打ち砕かれてしまう。
「これならくじ引きなんてしなくてもよかったわね」
妹に続いてすみれさんも入ってきて個室の内部を物色した後で荷物を置き始める。
「えっと……何してるんですかね?」
俺はすみれさんと妹の行動の意味をなんとなく理解しつつも尋ねる他ない。
「見た通り、荷物を置いてるんだけど、それがどうかしたかしら?」
「荷物はくじで決まった隣の部屋に置けばいいのでは?」
「ベッドが4人分あるから分ける意味ないでしょ。そうなれば、あれば勿論一緒に部屋に泊まるに決まってるじゃない」
俺の思った通り、どうやら蛍もすみれさんも俺と同じことを思ったようだ。
「ルールはルールですよ。守ってくださいよ」
「ふふふっ。嫌よ」
だがしかし、負けずにルールを盾にして部屋から出て行ってもらおうとしたが、妖艶に笑うすみれさんに一言で撃退されてしまった。
一室に男一人の女三人。一体どうなるのだろうか。
俺は今からドキドキすると共にとても不安になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます