第048話 日程
次の日、学校が終わったら巡回業務をしていつも通りコンビニに行くつもりだった。
「すみれが今日は家に来てほしいって」
しかし、來羽の言葉によって予定が変わる。
「なんだろう?」
「たぶん合宿のことかも」
「そうか。それなら別にメッセージでもいいと思うんだけど、呼んでるなら行こう」
「うん」
妹を心配させないように連絡を入れてからすみれさんが待っている來羽の家に向かった。
「いらっしゃーい」
「こんにち……ってなんですか、その恰好は!?」
「あら? 気に入らなかったかしら?」
「気に入るとか気に入らないとかそういう問題ないじゃないんですよ!!」
リビングに入るとすみれさんが出迎えてくれる。
ただ、その服装が問題だった。
いつもの巫女服ではなく、物凄く丈の短いチャイナ服みたいなモノを着ている。
すみれさんのムッチムチな体が納まりきらず、胸元が物凄く張っていてハート形に切り抜かれた部分から男の希望が詰まった谷間が零れ落ちそうになっている。
下もちょっと足を動かしたら内部が見えてしまいそうなくらいにパッツンパツンで物凄くエッチだ。
そんな恰好で客をもてなすすみれさんにツッコミを入れる。
急速に下半身にぶら下がっている息子が懸垂をするように体を持ち上げようとしてくるのが分かるが、なんとか収めようとまたゾンビを思い浮かべることで拮抗させることに成功した。
「えぇ~、満更でもなさそうだけどなぁ~」
「うぉっほんっ。それよりも今日呼んだ用件を早く話してくださいよ」
にやにやとした表情で俺のことを揶揄うすみれさんを無視して俺は咳ばらいをして綿台を変える。
このままじゃいつまでたっても話が進まないからな。
「もうちょっと遊びたかったけどしょうがないわね。もう予想はついていると思うけど、強化合宿の件よ」
「それなら別にメッセージでも良かったんじゃ?」
「それはまぁいいじゃない。それにこの姿が見れて良かったでしょ?」
「そ、それはそうですけど……」
予想通り話は合宿についてだったのでツッコミを入れたが、少し視線を泳がせながら誤魔化してチャイナ服でポーズをとる。
男心を見抜いたそそるポーズに思わず本音を出してしまう。
どうやらすみれさんの目的は、その姿で俺を揶揄うのことだったようだ。十分ほどの移動時間だけで、この姿を生で見ることができたのは確かに来るだけの価値があると思う。普通こんなエッチな服を着た美人を生で見るなんて無料じゃとてもじゃないが、見ることはできないだろう。
とんでもない美人のチャイナ服姿なんて見ようと思ったらどれだけお金を詰んだらいいんだろうか。
ぼっちな自分には縁のない話だったから全く分からない。
「あら素直じゃない。それはさておき、合宿なんだけど、28日の夜から7日の夕方までみっちりやるから覚悟しておいてね!!」
「え……」
「あら? どうかしたのかしら?」
唐突に真面目な話になるが、その内容に俺は言葉を失ってしまう。その様子を見ていたたすみれさんが心配そうに首を傾げた。
「あぁ……いえ、なんでもないですよ……」
「いいからいいから。言ってみなさいな」
しかし、素直に答えるとすみれさんも気を遣ってくれちゃいそうなのでしらばっくれようとしたが、すぐにばれてしまったようで、本当のことを話す。
「えっと……まさかゴールデンウィーク前日が合宿になると思わなくて妹とバーベキューしようって約束してて……」
「あらそうなの? うーん、それじゃあ蛍ちゃんも連れてきたらいいわ?」
「え? いいんですか?」
俺の考えに予想外の提案をしてくるすみれさん。俺はまさかそんな答えが返ってくるとは思わず、きょとんとした態度で聞き返した。
「蛍ちゃんがいいのなら、こっちは全然いいわよ。合宿と言ってもずっと修行しているわけじゃないから。バーベキューもできると思うわきょ。ただ、修行中は退屈してしまうかもしれないけど」
「マジですか。帰ったら聞いてみます。ありがとうございます」
特に気を遣って言っている様子もなく、連れてきたいならどうぞって感じなので、俺も家に帰ったら提案してみようと思う。
「いえいえ、部下には気持ち良く働いてほしいからね。当然のことよ。それに妹さん一人を残しておくのも可愛そうだし、危ないからね」
「それはそうですね。気付きませんでした」
「いいのよ。だから気兼ねなく一緒に来てちょうだい。詳しいことはこのしおりに書いておいたから」
「分かりました」
すみれさんに言われて俺が合宿に行くということは蛍が家に一人で過ごすことになるという部分をすっかり忘れていた。
そうなると尚更一緒に行くしかないだろう。
俺はいつの間にか風呂からあがってきたらしい來羽とすみれさんと暫く雑談した後で帰路に就いた。
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