第047話 次のお出かけ

 それから数日。雑魚の怨霊や悪霊が出てきたり、いくつか簡単な浄化依頼をしたくらいで、大きな事件も起こらずに平穏な日を過ごしていた。


「お疲れ」

「お疲れ様」


 今日も町の巡回任務を終え、お互いに労いあう。


「とりあえずコンビニ寄って公園行くか」

「うん」


 最近は仕事帰りにいつもの公園に寄り、報告書を書きながらコンビニで買ったお菓子やジュースをつまんで軽く雑談するのが習慣になっている。


 部活や学校帰りにどこかの店でご飯を食べたり、友達んちで遊ぶような感覚だろうか。本来の目的はあまりに帰ってくるのが早いと蛍の疑惑の目が強くなるからだが。


 今日も今日とてコンビニによって色々買い込む。


 そこでふと雑誌の特集記事が目に入った。


「バーベキューか……」


 こないだ花見をしたばかりで似たようなものになるけど、外の開放感の中、バーベキューを食べるのも悪くないなと思う。


 できれば川原とかでやって釣りなんかも出来たら楽しそうだよな。


 合宿がどのくらい続くのか分からないけど、休み全日合宿というわけじゃないはずだ。それなら合宿が終わった後か前に妹とバーベキューをするのも悪くない気がした。


 可能ならどこかでキャンプというのも悪くはないと思うけど、流石に未成年の子供だけでのキャンプってどうなんだろうか。


 ちょっと調べてみるか。出来そうならやってもいいかなと思う。


「どうしたの?」

「ん、いや、ゴールデンウィークに妹とバーベキューでもしたいなと思ってな」


 背後から話しかけてきたのは來羽。彼女に雑誌を指し示しながら俺が考えていたことを話す。


「蛍喜びそう」

「そうか? そうならいんだけどな。いつも世話ばかりかけてるからな。色々なところに連れてったり、色んな経験をさせてやりたいんだ」

「いいお兄ちゃんしてる」

「よせよ、そんなんじゃない。それじゃあ早速適当に買って出よう」

「分かった」


 俺はただ、六年も会ってなかった反動と天使みたいな妹に笑顔でいて欲しくてやりたいことをやっているだけだ。


 別に誰かに褒められるようなことじゃない。


 俺は恥ずかしくなってそそくさとジュースとおやつを買ってコンビニを出る。それから、いつものように報告書を書き、軽く雑談した後で俺たちは帰宅した。





「蛍、ゴールデンウィークはバーベキューでも行かないか?」

「バーベキュー!? 行きたい行きたい!!」


 ご飯を食べながら早速蛍とゴールデンウィークの外出を話し合う。


 妹はバーベキューと聞いて目を輝かせる。やっぱり妹にはこういう顔をしていてほしいなと思う。


 一応キャンプのことは今は話さない。ぬか喜びになってしまったら可哀想だしな。


 これはきちんと調べてから話すことにする。


 俺は寝る前に早速未成年だけでのキャンプについて調べてみた。


「これは難しそうだな……」


 ネットで調べてみると、基本的にキャンプ場では親の同意書が必要になるらしい。それに親が同伴しないと利用できないという場所も多いみたいだ。


 俺たちの保護者は一応、母の兄にあたる叔父になっているのだが、多忙で海外を飛び回っていることが多く、中々連絡がつかない。


 だから書いてもらおうにもすぐにとはいかないので、ゴールデンウィークまでにはちょっと間に合いそうになかった。


 もっと早く気付いていればどうにかなったんだけどな。


「折角だからキャンプもさせてやりたかったけどこればっかりは仕方ないな」


 俺は残念に思いながらスマホをいじるのを止めて目を瞑った。


 まぁキャンプは別の機会にしよう。


 そういえば、バーベキューには來羽を誘うのもいいかもしれないな。妹とはすっかり仲良くなったし、俺と二人だけというのも退屈かもしれないから明日聞いてみるか。


 そんなことを考えながら俺の意識は闇に沈んでいった。


 しかし、考えていた予定が全て崩れ去ってしまうことをこの時の俺は何も知らなかった。

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