第043話 突発チャレンジ
「多すぎないか?」
「色々教わっておかげで張り切りすぎちゃった!!」
「私も」
ちゃぶ台に所狭し……いや、ぎゅうぎゅうと言えるレベルで料理が並んだ状態を見て二人に視線を向けたら、蛍はほんのり頬を赤らめて笑みを浮かべ、來羽は同意するように首を縦に振った。
そんなに屈託のない笑顔で言われてしまったら何も言えないな。
「お兄ちゃんは育ち盛りだし、食べられるよね!!」
「はははっ……任せておけ」
妹の純粋な気持ちに戦慄して苦笑いを浮かべながら苦笑いを浮かべて返事をする。
「大丈夫。私も食べる」
「サンキュ」
隣で小さく呟く來羽に感謝した。
來羽は学校に五重箱を持ってくるほどの猛者。もし俺がダメでも食べ切ってくれるに違いない。
まぁ今日食べ切れなくても明日の朝とか弁当にするとか、來羽に持ち帰って貰うとかいろいろあるからどうにでもなるだろう。
「あ、明日の分と持ち帰りの分はまだあるからここにあるのは全部食べて良いからね」
「お、おう……」
しかし、その思惑は外されてしまった。
妹はその小さい体の通り、あまり食が太くないので、俺と來羽でどうにかするしかないだろう。
俺は覚悟を決めた。
「「「いただきます」」」
食前の挨拶をしていざ尋常に勝負。
目の前に並ぶのは七海が普段作らないような洋風のモノが混じっている。これは今日來羽に色々教わりつつ、一緒に作った料理だろう。
パエリア、ポテトサラダ、グラタン、ビーフシチュー、ステーキ……そのほか名前を知らないような料理が沢山ある。
食費を沢山渡したとは言え、滅茶苦茶使ってるなこれ……。
「食費は大丈夫か?」
俺は少し心配になって小動物のようにモキュモキュと料理を食べる蛍に尋ねる。
「もぐもぐ、ごくん。うん!! 全然大丈夫だよ!! 特売とか半額セールとかばっちり狙ったからね!!」
口の中を空っぽにしてからニッコリと笑う蛍。
うっ。そこまで考えて買い物してくれてるなんていつもありがとう妹よ。
「そうか。足りなくなったら遠慮せず言うんだぞ」
「分かった」
妹の献身に感謝して頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めて笑い、元気に返事をした。
「さて、食べるか」
來羽が淡々と料理を消化しているので、男の俺も負けるわけにはいかない。
早速取り皿に盛り付けて食べ始める。
ちゃぶ台の上には既に皿を置く空間がないので皿の上に盛り付けてそのまま手に持って食事を始めた。
「う、美味い!!」
料理を口に入れた瞬間、滅茶苦茶美味くて思わず言葉が漏れる。
「えへへ、ホント? ありがとうお兄ちゃん」
「ありがと」
蛍はモジモジして俯きながら嬉しそうに笑い、來羽は料理を口に運びながらほんのり頬を種に染めて言った。
その後は、料理を全部食い尽くすつもりでガツガツと口に放り込んでいく。どの料理も目を見張るほどに美味くて箸が止まらなかった。
今日は一日中体を動かしていたせいもあるかもしれない。
一時間近くかかったが、全ての料理をなんとか食べ切ることができた。
「うっぷっ」
勿論余裕とはいかなかったが……。
「食べ切ったお兄ちゃんにはご褒美があります」
「なんだ?」
蛍と來羽が綺麗になった皿を片付けてからこっちに何かをもって戻って来た。
ドドドドンッという効果音が聞こえるかのように目の前に皿が置かれた。そこには円形の物体が乗っていた。
「特大ケーキ!!」
それは妹の言う通り、ワンホールのケーキだった。來羽にも同じものが用意され、その一部が小さく切り取られていた。それは蛍の分として彼女の前に置かれている。
「どうぞ召し上がれ♪」
天使みたいな笑顔で言われてしまっては食べざるを得ない。
「いただきます」
俺は既にパンパンになっている腹を無視してその遠き頂に挑戦した。
持ってくれよ、俺の胃腸よ!!
俺は心の中で願いを込めてケーキに取り掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます