第041話 無頓着美少女は手に負えない

「お兄ちゃん!!」

「は、はい!!」


 妹は戻ってくるなりプリプリと怒りながら腰に手を当てて俺の名を呼ぶ。俺はその剣幕にビシリと気を付けの姿勢になる。


「どういうことなの!?」

「ど、どういうこととは……?」


 妹の問い詰めの対象がどれに対してか分からず、俺は恐る恐る聞き返した。


「お姉ちゃんのあの格好のこと!!」

「い、いや、俺も初めて仕事に行った時、蛍と同じように言ったんだけどな……全く聞く耳を持ってくれないんだよ……」


 さらにグイッと顔を近づけて妹の端整な顔に狼狽えながらも、当時のことを思い出して苦々し気に言い訳をした。


 ホントあの時は妹と同じように痴女だと思ったからな。


「あんな格好でホントはいかがわしいことをしてるんじゃないの!!」

「い、いや、そんなことしてないって!!」


 しかし、妹の追及が止まることはなく、ズビシと俺に指を突きつける妹に首をブンブンと振って否定する。


 あれ?


 でも背中に胸を押してつけられたり、股間に頭を突っ込んだり、悪霊の触手に絡めとられてあられもない來羽の姿を見たり、耳を甘噛みされたり、巫女お姉さんに絡まれたり……。


 思い返すとエッチな出来事ばかり。


 そう考えると妹の言っていることもあながち間違っていないような……。


 いやいや違う違う。これはれっきとした悪霊退治という立派な仕事。いかがわしいことじゃない!!


 思わず妹の言葉に頷きそうになるが、頭をブンブンと振って辛うじて否定することに成功した。


「ホントにぃ?」


 いぶかし気な視線でまだ疑っている妹。


「ホントだって!!」

「怪しい……それじゃあどんな仕事してるの?」

「えっとだな……」


 俺は必死に言い訳するが、蛍は痛いところを付いてきた。全く言い訳が思いつかずに言いよどむ。


「やっぱり言えないんだ……」

「いやいや、そんなことないって!!」


 そんな俺を妹はジト目で睨んできて俺はなんとか宥めようとするが、良い言葉が思いつかない。


「私たちの仕事は人が入らないような場所の調査。あのスーツは見た目以上に防御力が高くて寒さにも熱にも強いから、狭い場所でも寒い場所でも熱い場所でも快適に過ごすことができる。泰山は勘が鋭いから私たちが気付けないことに気付いてくれる。だから仕事に勧誘した」


 しかし、そこに天の助け。


 來羽の声が出現した。


 ただ、その助けは俺と蛍が顔を來羽の方を向くまでの短い時間だった。


「な、なんて格好で出てきてるのよ、お姉ちゃん!!」

「~!?」


 蛍の言う通り、彼女はキャミソールにパンツという姿を恥ずかしげもなく晒していた。


 キャミソールの下に何もつけていないのか、二つの突起が浮かび上がっている。その上、パンツは相変わらず紐パン。ローライズで面積が少ない。來羽みたいな程よく鍛えられたスレンダー美少女のキャミソールとパンツの間から覗く下腹部と、スラリとした生足は目に毒過ぎる。


「ん? どうかしたの?」


 俺がいるにもかかわらず全く気にする様子もなく首を傾けた。


 彼女の頭の上には疑問符が浮かんでいるのが透けて見えるようだ。


「もう!! お姉ちゃんはお兄ちゃんがいるんだから体隠して!! お兄ちゃんはあっち向いて!!」

「は、はい!!」


 俺は妹に体を動かされて來羽から体を背け、背後から聞こえる音を聞く限り、妹は來羽を連れてどこかに行った。


 しかし、妹が俺を後ろに向かせるのは遅すぎた。


 なぜならすでに俺の脳裏に來羽の姿が焼き付いて離れないからだ。


「ぴっちりスーツもいいけど、ああいうのも悪くないな」


 頭の中で今日の姿と戦闘スーツ姿を思い浮かべて呟く。


 いつも見ている來羽の肢体をほとんど晒しているにも関わらず、ぴっちりとした服で覆われて隠れているという男ならそそられずにはいられない煽情的なエロスも良いけど、キャミソールの裾のしたから覗くへそと肋骨、ほんのりと浮かぶ二つの膨らみの先端の影、その下にあるであろう魅惑的な体を想像させるチラリズムも素晴らしい。


「うっ」


 想像したらまた体の一部に熱が集まってくるのを感じた。


「それにしても約束って言っていたけど、なんだったんだろうか」


 俺は妄想を振り払うように別のことを考える。


「ん?」


 その時、視界にテーブルの上に沢山の食材が乗っていた。料理のことで盛り上がっていたからもしかしたらそっち関係で何か話していたのかもしれない。


 また美味しい料理が食べられると思うとテンションが上がった。

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