第040話 襲来

 日曜日は、いつもの哨戒任務をより広範囲かつ精密に行い、普段では見つけられないような悪霊の発見、浄化を行った。


 もうすぐ日が落ちる。


 異世界では毎日ほぼ一日中、襲い掛かってくるアンデッドの浄化を行っていたのでこの程度は慣れっこだ。しかし、こっちに戻ってきてからこれほど長く気を張ることはなかったため少々気疲れをした。


 今日の任務ではそれほど脅威になるような悪霊は現れず、雑魚っぽい奴らばかりだったので何事もなく終えることができた。


 任務中に起こった何事かの全ては來羽絡み。いつものごとくぴっちりスーツの來羽の方が圧倒的に脅威過ぎる。


 今日は朝に煩悩を沢山放出してきていたのでなんとか事なきを得たといったところだ。


「ふぅ……」

「お疲れ様」


 疲労感を現すようにため息を吐くと、來羽が飲み物を手渡してくる。


「ありがとう」

「どういたしまして」


 ジュースを受け取った俺はキャップを開けてペットボトルを傾けてぐびぐびと飲み込んだ。一日中働いた後だったので、体中に染みわたる。


「俺が報告書を書いておくな」

「うん、分かった」

「それじゃあ帰ろうか」


 報告書は來羽に書かせると何を書くか分からないので、最近はいつも俺が書いている。そのおかげで大分慣れてきた。


 すみれさんにも何も言われていないので問題ないはず……と思いたい。


 俺たちは退魔局によって報告書を書いて提出し、身体強化をして家へと帰宅した。 


「ただいま」

「おかえり~」


 俺が敷居を跨ぐと、妹の元気な声が奥から響いてくる。


「それで……なんで家の中までついてきてるんだ?」

「約束したから」


 しかし、いつもとは違うことがあった。それは家の前で別れるはずの來羽が俺の後に続いて家の中に入ってきたからだ。


 なにやら約束があるらしい。


「お兄ちゃんおかえり……え!? 痴女!?」

「やっぱりそういう反応になるよなぁ……」


 ただ、妹が出迎え、俺から來羽に視線を移した途端妹はギョッとした顔になった。


 俺は自分が初めて來羽のぴっちりスーツを見た時の自分と重なって懐かしさと共に、來羽の無頓着さと、そんな彼女の格好に慣れつつある自分に少し呆れる。


 彼女がピチピチスーツ姿のまま家の中に入れるのを止めなかったことからもそれが分かる。


「お、お兄ちゃん!! 見ちゃダメ!!」

「ああ、いや、うん、そうだな」


 我に返った蛍は勢いよく俺の視界を遮るように來羽の前に立ってとおせんぼするように手を広げる。


 しかし、妹よ、今更手遅れだぞ?

 もう一週間くらい毎日のように見てるし、今日も一日中見ていたんだから。


 そんな風に思いながらもツッコミを入れるのは止めておいた。


「お、お姉ちゃん着替えある!?」


 蛍は俺から來羽を守りながら少し振り返って來羽に尋ねる。


「うん。あるけど?」

「少し汚れてるみたいだし、お風呂沸かしてあるからすぐ入るよ!! こっち!!」

「お邪魔します」


 來羽が返事を聞いた途端、蛍は來羽の手を引いて家の中に上げる。來羽は困惑しながらも挨拶をしてブーツを脱ぎ、蛍の為すがままに妹の後を付いていった。


 その背を追う俺、視界には彼女の張りのあるお尻が、ぴっちりスーツによって強調され、魅惑的にプリプリと揺れている。


 何度も見てもエッチすぎる。


「はぁ……夜も処理してからじゃないと眠れそうにないな……」


 今日任務中に脳内カメラで納めた数々のぴっちりスーツのきわどいシーンを思いだしながら、ため息を吐いて俺も靴を脱いで家に上がった。


 風呂は來羽が使っているので俺は台所で手を洗う。


 そこには妹が普段使わないような食材が並んでいた。


 もしかしたら來羽が言っていた約束と何か関係あるのかもしれない。


 俺はそう思いながら蛍が帰ってくるのを待った。

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