第024話 ドア toドア
あっぶねぇえええええええ!!!
俺は彼女の上からゴロリと横に転がり、点を仰ぎながら内心滅茶苦茶焦っていた。あのまま來羽が俺の耳を噛まなければ絶対にいくところまでいっていたと思う。
來羽の突飛な行動に救われることになった。
本当に危なかった。
「はぁ……」
俺は來羽とおかしなことにならなくて安心したと同時に、最後までいっておけばよかったという、男の本能的な部分での後悔が襲い掛かってくる。
でもあのまま最後までやってたら絶対色々マズかったはずなので俺の選択は何も間違っていない。
俺は自分にそう言い聞かせることで納得させた。
気持ちを落ち着かせて上体を起こすと、來羽がジャージのファスナー締めて体を隠していた。
そして顔色も元通りになっていて、先ほどまでの蕩けた顔が嘘だったみたいに無表情になっている。つまり完全に発情状態からは抜けているということだろう。
「ご、ごめんなさい……私おかしくなってた……」
來羽がモジモジしながら俯いて、俺の方にひょこりと正座して謝る。
いつもの無表情とは違い、感情が完全に露出してしまっている彼女はいつも以上に可愛くて思わずときめきそうになる。
しかし、俺はモブで彼女は絶世の美少女。
つり合いが取れるわけも、彼女が俺に惚れるわけもないのでそっとその気持ちに蓋をした。
「いや大丈夫だ。何事もなくてよかった」
「うん、泰山のおかげ。ありがと」
「何度も言ってるだろ? 俺たちは仲間だ。仲間がピンチに陥ったら助けるのは当たり前なんだから一々礼なんて言わなくてもいいんだよ」
「それでも。ありがと」
「へいへい、どういたしまして!!」
來羽は礼を言わなくても良いって言ってるのに何度も俺に礼を言う。俺は恥ずかしくなって頭を掻いて彼女から顔を背けた。
「依頼も終わったことだし、いつまでもそんな恰好させてられないからな。すぐに着替えに戻ろう」
「そうだね、分かった」
俺たちは依頼を達成し終えたのでその場を後にして人除けの結界を自分たちに掛け、俺は教室で、來羽は女子更衣室で着替えた。
依頼は終わったが、俺は特に何もしなくてもいいんだろうか。
「お待たせ」
着替え終わった後でそんなことを考えていると、來羽が教室へとやってくる。学生服に着替え終わっていて先ほどまでのエッチな様子は微塵もない。
しかし、少し体が上気しているところを見るとシャワーを浴びてきたらしい。
ほのかにお風呂上りのいい匂いもしてくるが、今日は二度も欲望を体内から放出したので反応しない。
「俺は何か報告したりはしなくてもいいのか?」
「今日の報告書は私が書くからまた今度でいい」
「わかった。ありがとう」
「んーん、今日は私何も出来なかったから。これくらいする」
「そうかよろしくな」
「うん」
どうやら今日の所はいいところがなかったから彼女自身が書いてくれるらしい。いずれは自分で書く必要もあるだろうけど、今日の所は彼女の言葉に甘えよう。
しかし、思った以上に今日の仕事が早く終わってしまった。すぐに帰ると妹がバイトはどうしたんだと勘ぐってくるだろう。
それは困るので時間を潰さなければならない。金もないし公園でのんびりするか
「それじゃあ帰るか」
「うん」
俺たちは教室を後にした。
「またな」
「うん」
俺と來羽は校門前で別れたはずだった。
―タッタッタッタッ
俺の後ろを足音が居ってくる。振り返ればそこには來羽がついてきていた。
「あれ? 俺達今別れなかったっけ?」
「?」
そんな彼女に尋ねたが、彼女は何を言っているか分からないという風に首を傾げた。
「オッケー。分かった。帰りも一緒に帰るのか?」
「うん、そう」
「了解」
どうやら帰りも俺の監視をする必要があるらしいので彼女と一緒に帰路に就いた。
帰りも行きと同じように俺の横にピトリと張り付いていた。
しかし、二度目の賢者になった俺は問題なく歩くことができた。
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