第017話 旧校舎の噂と初めての依頼

「ひどい」

「いやいや悪かったって」


 学校に着くと置いてった來羽にジト目で見つめられたので、俺はアタフタしながら弁明する。


「え、本野君、忍野さんに何かしたのかしら?」

「もう手を出したとか?」

「えっ、そっち!?」

『きゃー!!』


 いるだけで目立つ來羽の一挙手一投足がクラスメイト達の興味を引き、女子連中一部が黄色い声を上げた。


 一体何を話しているんだろうか。


 ただ、一夜明けて興奮が落ちついたのか、元々出来ていたグループで普段通り話している人達もいる。


 勝はと言えば、自分の席で大人しくしている。來羽に皆が慣れたらあいつも一緒に話をしたいところだ。


「ねぇねぇ、あの噂知ってる?」

「何々?」

「なんでも旧校舎に出るんですって」

「出るって何が?」


 その中のいくつかは共通の話題を話しているようだった。


「アレよ、アレ」

「それってまさか……」

「そう、幽霊よ」

「うわぁ、絶対近づきたくない」


 どうやら旧校舎に出る幽霊の話をしているらしい。


 女子生徒たちは噂を語っている女の子以外、顔を青くさせている。


「旧校舎?」


 彼女も仕事的に話が気になったのか、俺の方を向いて首を傾げた。


「ああ。この学校はかなり歴史が古いからな。少し前に建て替えられたんだ。それで旧校舎が残っていて、部室なんかとして活用されていたりするんだよ」


 今使われているのは新校舎で、旧校舎は敷地内の別の場所に在る。


 この学校はどういう理由か分からないけど、敷地面積が滅茶苦茶広かったので、同じ敷地内に新校舎が建てられた。


 旧校舎は今も言った通り、部活で活用され、特に軽音部とか何かと音が大きくなりそうな活動をしている部が使用している。


「幽霊は?」

「あそこは古いからな。見た目がボロいし、暗くなるとそういうのが出そうな雰囲気があるんだよ」

「……」


 幽霊に関しては以前からちょこちょこ聞く話だ。


 誰も居ない場所から音がなっただの、窓際に白い女の人が立っていただの、後ろから声を掛けられたけど誰も居なかっただの、よくあるような噂が立っていた。


 今回もそれと同じような類の話に違いない。しかし、來羽は何事か考えるように黙ってしまう。


「なんだ? 興味があるのか?」

「もしかしたら悪霊かもしれない」


 そういう話には興味はないと思っていたが、もしかしたらと思って尋ねてみたら、別の返事が返ってきた。


「なるほどな。ああいう場所にはアイツら集まりがちだもんな」

「うん」


 確かに彼女の言う通り、幽霊やら悪霊やらっていうのは陰気な場所に集まりがちだ。


 旧校舎も結構影があると言うか、普通にあるはずなのになんだか暗い雰囲気を放っている。


 それに俺は霊が見えるようになってから旧校舎に行った事はない。もしかしたら來羽の言う通り、本当に悪霊が居る可能性がある。


「ん?」


 來羽は何かに気付いたような顔をすると、ポケットからスマホを取り出した。


「泰山、仕事」


 彼女がそう言って俺にスマホの画面を見せる。


「高校の旧校舎の調査、及び悪霊の討伐」


 その画面にはそう書かれていた。


 概要を見る限り、どう見てもその高校とはウチの学校のことだった。


 どうやら本当に不可解な出来事が起こっているのだろう。もしかしたら何らかの被害も出ているのかもしれない。


「依頼なら仕方がない。今日の放課後にでも行ってみるか」

「うん」


 俺達は学校が終わった後で、パトロール業務はお休みにして、旧校舎に行ってみることにした。

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