第007話 転入生
翌日の月曜日。
俺は6年ぶりに学校にやってきた。
「ここも何も変わっていないな」
現実の時間が過ぎていないのだから当然の話だが、やはり自分の中で6年経っているので少し違和感がある。それと同時に、学校はいつまで経ってもそこにあるという印象もあるので変わってないという安心感を覚える。
俺は校舎内を記憶を頼りに進み、2学年の自分の教室の自分の席に腰を下ろした。その直後に俺が良く知っている奴が教室に入ってくる。
「おい聞いたか?」
「ん? いや知らないぞ」
席に荷物を置くなり、俺に話しかけてきたのは隣の席のクラスメイトである
天然パーマで髪の毛がアフロみたいな髪型のおかしな男。
幼稚園時代からの腐れ縁で高校も同じところに進学し、クラスもずっと同じという一致率に、二人とも呪いではないかと疑っているほどだ。中には腐のつく女子達から若干熱い視線を注がれていた気がするのは気のせいだと思いたい。
とはいえ、言わば親友と呼べる間柄だと言えるだろう。
しかし付き合いの長い俺でも、そんな急に主語もなく話されたら分かりようがない。何を言っているのか分からずに首を傾げた。
「なんか転入生がくるらしいぞ?」
「へぇ……」
ただ、勝の返答を聞いた途端興味を失った。
「なんだよ、興味ないのか?」
そんな俺の心情を見透かすように返事を返す勝。
流石俺の幼馴染、よくわかっていらっしゃる。
「いや、どうせ関わることなんてないだろ?」
俺はバイトをしている関係上みんなと話が合わない上に、あまりしゃべるほうではないし、付き合いも悪いためクラスではモブ扱いになっている。
そんな俺が転入生と関わる可能性など皆無に等しいのであまり興味を引かなかった。
「まぁ、俺達モブ組にはあんまり関わりにはならないだろうな。しかーし!! 来るのは美少女だぞ? お近づきになれなくても見るだけでも目の保養になるだろ」
「それは確かに一理あるな」
ただ、今度やってくる相手は美少女。そうとなれば話は別だ。
可愛いは正義。それは俺も激しく同意するところだ。お近づきになることはなくても美少女は見てるだけで癒しになる。というか今の俺はお近づきになられると自動的に体の一部が反応してしまうのでならなくていい。
そう考えたら一体どんな女の子が少し興味が湧いた。
「皆さんおはようございます。席についてくださいね」
話をしていると先生が教室にやってきて俺たちを席に付かせた。
「もう知っているようだが、今日はこのクラスに新しい仲間がやってきた」
先生が転入生の話をしたら、クラス内が活気づいて近場の人間とお互いにワイワイと話して賑やかになる。
「ほら、話が進まないから静かにしろ。とりあえず入ってきてもらおう」
色めき立つ生徒たちを宥めてから先生は教室の入り口の扉を開ける。
「入ってくれ」
「分かりました」
先生は外にいるであろう女の子に声を掛け、その子の返事を聞こえた。
「ん?」
なんだか聞いたことがある声だったような気がするが、そんな訳ないと思いなおして首を振る。
「え……?」
しかし、教室の入り口を潜り抜けて入ってきたのは見覚えのある人物だった。
濡羽色の美しい黒髪を後ろでハーフアップにまとめている、少し眠そうな大きな瞳、そして整った目鼻立ちの美少女忍野來羽その人であった。
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