第003話 ポニーテール泣きボクロ巨乳巫女お姉さん
日を改めてトークアプリで色々と話を聞いた俺は退魔局に所属することを決めた。
俺が昔から世話になったバイト先のおっちゃんたちに事情を話すと、彼らは名残推しみながらも俺がバイトを辞めることを了承してくれたどころか、快く送り出してくれた上に、選別といつでも戻って来いという温かい言葉を掛けてくれる。
本当にバイト先の人たちには頭が上がらない。いつか必ず恩返ししようと心に決めた。
それで日曜日の今日は、契約の手続きをするために退魔局のある場所にやってきた。
「いらっしゃい」
「あ、ああ」
そこは市街地にある、まるで都会にあるおしゃれなオフィスビル。田舎にも関わらず立派な佇まいで、周りから少々浮いていた。
中に入って受付に話を通してロビーにあったソファに腰を下ろす。
なんだか行き交う人が女性しかいない上に、自分には場違いな空間に暫くソワソワしながら待っていると、來羽がやってきて俺を出迎えてくれた。
彼女は日曜日に関わらず制服を着ていた。
チラリと覗く、すらりとした足が眩しい。
「それじゃあついてきて」
「分かった」
彼女の案内で建物の奥へと進んでいく。エレベーターに乗り、最上階へと昇り、一番奥の立派そうな入り口の部屋に案内された。
―コンコンッ
「入ってちょうだい」
ノックをすれば中から女性の声が聞こえ、來羽は特に何も言うことなく室内に足を踏み入れる。
「し、しつれーしまーす……」
俺はおっかなびっくりにその後に続いてひょこひょうとした足取りで中に入った。
そこは奥の壁の全面がガラス張りになっていてその前に執務机が置いてあり、その机には一人の女性が座って書類に目を通している。
「いらっしゃい。君が來羽が言っていた子ね。ようこそ退魔局へ」
來羽と俺が机の前に並ぶと、彼女は顔を上げて俺を見て微笑んだ。
彼女は黒髪をポニーテールにまとめ、巫女服を着ている二十代半ほどの女性。キリリとした気の強そうな瞳に、筋の通った鼻に艶めかしいほんの少し厚め唇、そして左目の下には泣きボクロがあり、大人の色香を纏っていた。
そして、何よりも巫女服の上から分かるほどの二つの盛り上がりが机の上に乗っかって強調されている。控えめな來羽とは対照的だ。
―ゴクリッ
俺は思わず生唾を飲み込んだ。
「いたっ」
突然脇腹に痛みが走ったかと思うと、何故か分からないが、來羽につねられていた。
「ふふふっ。すっかり仲良しね。本野君、今日は来てくれてありがとう。私はここの局長をしている神崎すみれ。話は聞いてるかしら?」
「はい。一応は」
俺達を見ながらクスリと笑う神崎さん。
來羽から組織のことや業務と契約内容等について説明を受けている。俺くらいの力があれば問題ないと言われているが、こういう場は慣れないのでやはり緊張してしまう。
「君には実力試験を受けてもらいます。内容は指示した悪霊を退治してもらうこと」
「は、はい」
「敵は全然強くないし、一人じゃなくて來羽と一緒に受けてもらうから安心して」
「わ、分かりました」
來羽から話を聞いていた通り、組織に入るための試験を受けることになった。ガチガチになっている俺を安心させるように微笑む。
詳しい話は聞いていなかったが、どうやら來羽と一緒に行動できるらしいことが分かり、少し安心した。
あのリッチみたいなやつなら何匹来ても相手になるが、もっと強い奴だと厳しいかもしれないからな。
「今回の試験官は他の面々が空いてないから私が勤めるわ」
「了解」
「分かりました。よろしくお願いします」
神崎さんみたいな綺麗な女性に試験官をされるという響きだけで俺の体の一部が熱を持ちそうになるが、どうにか気を逸らして堪えた。
「それじゃあ、早速現場に向かおうと思うけど、準備はいいかしら」
「大丈夫です」
「では行きましょう」
俺たちはロケハンで使用しそうな車に乗って試験会場に移動した。
「君にはこの家に憑りついている悪霊を浄化してもらいます」
やってきたのは古ぼけた洋館で、外から分かるほどに嫌な気配を放っている。
「手段は問わないけど、悪霊を浄化できたら試験終了になるわ」
「分かりました。っと忍野さんはどこですかね?」
どうやらあの館の悪霊をどうにかするのが今回の依頼らしい。ただ、今回は來羽が付き添ってくれるはずなのだが、彼女の姿が見当たらない。
「來羽は戦闘服に着替えているからちょっと待ってちょうだい」
「なるほど」
俺も運動ができる格好で着てって言われていたからジャージできたし、確かにスカートじゃあまり激しい動きは出来ないもんな。めくれてその下に隠された聖なる布が見えてしまったら大変だ。
しかし、俺の心配は逆の意味で裏切られることになる。
「お待たせ」
「あ、ああ……へぁ!?」
來羽の声に従い、後ろを振り返れば赤面せざるを得なかった。
なぜならとんでもない格好で來羽が姿を現したからだ。
俺はそれだけで前かがみにならざるを得なかった。
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