剣山に「将来の夢」を生ける

「『将来の夢』を生けてもらいます。」


 生徒の前の机上には剣山が用意されている。


「それでは初め」


先生の合図で各々が花を生け始める。


 あの子は華々しく色とりどりに生けた花々を先生に見せに行く。

 あの子は個性的で鮮やかな花々を先生に見せに行く。

 僕は…

 時間がもうない。

 

 僕は無味乾燥な造花を一本だけ生けた。

 

 いつかこの花たちの色が変わることを知っている。

 いつかこの花たちが枯れることも知っている。


 でも先生は華々しく生けられた花を褒める。

 

僕はこのまま明るい花を持つことはないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

刹那的ディストピア 久遠/くおん @SS_Kuon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ