刹那的ディストピア
久遠/くおん
残機調整委員会
「本日より本国民の残機が2になります」
残機調整委員会からの発表だ。
現状のこの国は不景気に悩まされており、タンス預金だの老後の資金だのとにかく金の回りが悪い。
そこで打ち出されたのが残機引き上げ案だ。
死ぬとランダムな環境にリスポーン(再発生)される。
きっと人々は残機が2つある安心感で思い切った行動を取るようになり、経済は活性化されるだろう。
予想は見事に外れた。
不思議なことに交通事故は格段に減り、人々は貯金志向になり余計消極的になってしまった。
こうなったら残機を100に引き上げよう。
俺は大学2年生。
現在彼女と同棲している。
周りの人々は死ぬことを極度に恐れている。
誰もが残機が残っているという状態を維持したいと思っているようだ。
残機を増やして人々が安全志向になるなんて皮肉な話だ。
世の中が安全を求める傾向にあるのは彼女とずっと幸せでいたい俺にとって良い話だ。
彼女の声に応える。
「死んだらこんないい人に出会えないからな」
今朝、政府から残機を100に引き上げるというニュースが流れた。
俺はすぐ死ぬことを決意した。
必死に泣きながら引き留める彼女。
彼女の声に応える。
「死んだらもっといい人に出会えるからな」
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