2-4
≪安城閑華視点≫
長崎に着き、石川YUZUさん―・・・・・・つまり私と会うことになりました。
水無瀬さんは私の正体に気付いていないようで何よりです。
私の中では最重要危険人物扱いですからね。
皆さんが出ていくのを待ち、変装を解きます。
サングラスを付けて、先回りできるように小走りで神薙大丘へ着くと
喫茶店に入り、スマホを出して打った形跡を残しておくことにしました。
間もなく島田くんから連絡が来ました。
安城の方の携帯を出すと、案内をして来てもらいました。
島田くん達が入ってくるのを待ち、声をかけました。
「あ、君達が閑華が言っていた人ですか?」
あえて自分とは別人と思わせるために下の名前を呼び捨てにしました。
これも変装術の1つです。
「ま、立ち話も疲れるだろうし、座ってくださいよ」
全員を座るように誘導すると、私はサングラスを取りました。
先ずは感謝を示さなければいけません。
「ごめんなさいね、わざわざ私のところに来てもらって」
「石川さん・・・・・・でいいですか?」
「その名前で話していると正体がバレかねないから本名、教えておきますね。
澤井紅梨といいます」
「澤井さん、でいいですか?」
「紅梨でいいですよ」
「年齢はいくつですか?」
陽菜さんが訊いてきたのでここはしっかりと答えることにしました。
「12歳です。中1ですよ。多分閑華と同じはずです」
「わたくしと同い年ですね」
「あ、そうなんですね」
しばらくはお互いの自己紹介をしました。
知っていることですが、聞いておかないと怪しまれますから相槌を打ちながら聞きます。
「この前はありがとうございました。わざわざわたくしの学校のことをやらせてしまって」
「いえ、閑華の友人が被害者だったからたまたまね」
水無瀬さんは深々と頭を下げたので、頭を上げるように言いました。
「閑華とはどこで会ったの?」
靜枝さんが突然訊いてきたので少し焦りました。
冷静に考え、島田くんとの出会いを気づかないことを願って使うことにします。
「靜枝さんはやはり気になりますよね。確か・・・・・・摺川瑠南さんの本がきっかけでした」
「俺も同じだな」
ですよね。
流石に気が付きますよね。
どうしましょうか・・・・・・。
ここは恍けるのが一番ですね。
「あ、そうなんですね」
ホッ。
気づかれていないようで何よりです。
「それがきっかけで私の正体を教えました。というのも
閑華にお互いにバラされては困る情報を持っていたほうがいいと言ったからです」
「確かに」
少し変えておくことで一致させないことを暗示しておきます。
「そう言えばなんで安城さんが紅梨さんの名刺をもってたの?」
島田くん・・・・・・鋭すぎません?
探偵ですか?
崖に追い詰められたネズミのような気持ちになりました。
「閑華には、私が行けない場所で動いてもらうために
世界で数枚の名刺を持たせているんです」
名刺はあえて直筆で半透かしを入れてあるので私しか作れないはずです。
皆さんを駅に送るために駅に向かっていたときのことでした。
パトカーが街道沿いに数台走っていくのが見えました。
「何かあったのでしょうか?」
水無瀬さんが首を傾げたので、私はパトカーを1台捕まえて訊きました。
事件が会ったそうなので、現場へ向かい、水無瀬さんの権限で現場に入れていただきました。
私は自分の名刺は必要時しか使わない主義なので。
私は仕事用スマホを出し、相川さんに居場所を訊きました。
「・・・・・・相川さん、長崎に来てるんだ」
長崎にいるそうなので来ていただくことにしました。
多分非番ですよね。
◆
「信田圭人さん、死因は転落死、おそらく自殺でしょう。
死亡推定時刻は昨日の22時〜今日の4時。壁と体が擦れた痕跡も鑑識が確認しています」
「相川さん、ありがとうね。非番の時に」
「いえ、実家に帰省しただけだ。問題ない」
相川さんが水無瀬さんと軽々と話す。
私は手帳に全て書き写すと、現場を見上げました。
確かにこの高さなら亡くなるでしょう。
「一様第一発見者は川田健一さん、同僚だそうだ。
毎日一緒に通っていてたまたま通ったら見つけたそうだ」
「なるほど」
「捜査権は水無瀬、そして石川に連絡が取れるなら石川に授ける
ま、警察は自殺と処理すると思うがな」
はい、分かりました。
自殺ではなくこれは確実に殺人です。
おそらく警察が気づかない可能性が大きいですけど。
私は現場を一通り歩き、メモを取ると、先回りするようにホテルに戻りました。
「ただいま〜」
「お帰りなさい、どうでしたか?」
「事件に遭遇して明日も紅梨さんに会うことになった」
島田くんが座りながら言いました。
私は少し考えて答えました。
「そうですか。また仕事が増えそうですね」
「安城さん、紅梨さんの助手かなにかなの?」
「多分雑用みたいなものですよ」
私は苦笑いをしてスマホを出しました。
◆
姉は私の正体を知っているので、私は夜に調べに出かけました。
先ずは会社です。
日本道路整備社に着くと、案内してもらい、代表者と会談しました。
「信田は、なんでも物の見方が違いました。
我々はこれから第4狩梅九州トンネルを建設するところでしたが、
信田は、それについて反対派でした。なにせ予算は2兆9500億円です。
信田とライバル関係に合った人は山田です。でも彼は信田とは仲がいいんです。
仲がいいからライバルなんだ、とよく言っていました。
山田は常に慎重な人です。何をやるのも慎重にやります」
「計画はいつから立てていたんですか?」
「5年前からですね。一般公開したのは3年前です」
「最近、信田さんに変わった様子はありましたか?」
「そんなことを言われても分からないです。
あ、そういえば全く関係ないことですが、山田と信田がよく言っていた場所があります」
私は頂いた紙に書いてある通りに向かい、筑紫川老人ホームに着きました。
「すみません。夜遅く」
「はい・・・・・・」
「私、こういう者です」
私が名刺を見せると、施設に入れてもらいました。
その人は糶崎由香さんと名乗りました。
「信田さんについて教えていただきたくて来ました」
「信田さん・・・・・・高速道路会社の?」
「はい」
「あの人は、いい人でした」
「と言うと?」
「私達の常に味方でした。私達が追い出されないように努力してくれましたよ。
確か最後に来たのは5月1日でしたね。
でももう無理でしょうね。
立ち退き料を頂いて私達はここから去ることにこの前決めたんです」
「立ち退き料、どれくらいですか?」
「15億円。この施設が立って間もなく建設声明が出されましたから。
世間にこのことも新聞で流れました。そこに飾ってあります」
「庭にあるおそらく植えたばかりの樹木はどこから?」
「信田さんです。毎回来るたびに持ってきてくれました。
毎日大きくならないかと施設の人が水を大量にやっているんですがね」
「何日ほど前ですか?」
「2,3ヶ月くらいですかね」
「・・・・・・」
「それにしても信田さんが転落死してしまうなんて・・・・・・。自殺ですか?」
「・・・・・・いえ、それは教えられません」
私は少々疑問を抱きながら持ってきてくれたと言う木を見せていただきました。
おそらくカラマツかなにかでしょう。
「カラマツ・・・・・・ですか?」
「えぇ。早く大きくなってほしいものです」
私は時計を見て20時を過ぎていることを確認すると、山田さんに会いにいくことを決めました。
会社の方へもう一度行くと、山田さんがすぐに応答してくれました。
「すいません。お仕事の邪魔をして」
「いえ、どうせもうすぐ終わります。・・・・・・信田のことですよね」
「はい」
「アイツは物の見方が違うんですよ。
学生時代からの友達で意気投合したんです。
多少の食い違いは合ったものの仲良くやっています」
「信田さんの机を見せていただけませんか?」
「構いませんよ」
私は信田さんの机に案内してもらうと、机を調べました。
引き出しを開けると、鍵束が出てきました。3本ありました。
「どこの鍵かご存知ですか?」
「1本目は会社の鍵でしょう」
おそらくこの鍵束はなにかに役に立ちそうと勘が働きました。
続いて、PCを付けて中を見せていただくと、
メモ書きで住所がいくつか並んでいました。
「どこの住所かご存知ですか?」
「どこも知らないです」
私は山田さんにお礼を言うと、信田さんのPCに入っていた住所を7つ回ることにしました。
私はスマホを出し、住所を調べ、1つ目の目的地に着くことができました。
「すいません」
「あ、はい?」
建設会社でした。
私が名刺を見せ案内してもらいました。
「ここによく信田さん、来てましたよ。
熱心に機械を見てCO2排出量とか調べてましたよ」
「信田さんが忘れて行ったものとかありませんか?」
「ん〜確か・・・・・・あ、ちょっとまってな」
河合さんは駆け足で取りに行くと、手帳を持ってきました。
「これ、なんかここに置いといてくれって」
「ありがとうございます」
受け取り中を見ると、メモ欄に赤字で2つ、大きく住所が書いてありました。
どこかで見た気がするんですけれど・・・・・・。
手帳を開き、照らし合わせると、先程のPCのメモと同じところでした。
1軒目は証券取引会社でした。
ここから、信田さんの話は聞くことができませんでした。
2軒目は時間が時間なので、明日にすることにしました。
ホテルに戻ると、姉が迎えてくれました。
「おかえり、この後水無瀬さんたちでお風呂らしいよ。一緒に行ったら?」
「そうします」
私は水無瀬さんと陽菜さんとともにお風呂に入って来ました。
帰ってくると、整理をする用の手帳を開き、関係を整理しました。
なんとなくしか解らないけれど分かったような気がしました。
◆
次の日はホテルで昨日の成果をある程度報告しておくことにしておきました。
「この会社は高速道路会社で第4狩梅九州トンネル工事を開始しようとしているとのことです
信田圭人さんは工事反対派でした。
そんな信田圭人さんの友人であり、ライバルな山田浩之さんは
工事派で会社としてもその方針でした。
次に筑紫川老人ホームの糶崎由香さんは山田浩之さんとよく会っていたそうです。
工事計画は5年前から。
世間に公開されたのは3年前だそうです。
糶崎由香さんは4年前に老人ホームを立てて追い出されるために
立ち退き料のを受け取るんです。
工事費用は2兆9500億円。
糶崎由香さんは15億円ほど受け取れるそうです。
老人ホームの話題は新聞でも発行されたそうです。
他を何件か回りましたが、収穫は殆どなかったです」
私は手帳を見ながら言いました。
最終目撃などを訊かれました。
会社が最後でした。
今日は昨日行けなかった場所に行き、
ドライブレコーダーなどから最終目撃を洗いたいと思っています。
「とりあえず各々で整理タイムね」
水無瀬さんが手帳に書き込みながら言いました。
テレビをちらっと見ると、転落死の話題が流れていました。
そこで1つ気になりました。
何故あの人はこのことを知っていたのでしょう。
私は手帳にそのことを書き、手帳を閉じました。
「紅梨さん、どうですか?」
「情報収集に行ってきます」
私は部屋を出ると、エレベーターへ向かいました。
「紅梨さん、ご一緒してもいい?」
陽菜さんと島田くんが付いてきました。
別に隠すこともないのでいいですよ、と言いました。
「紅梨さんはいつから探偵やってるの?」
陽菜さんが訊いてきました。
「小4くらいだった気がします」
実際は小3ですけど。
小さい事件を解決しているうちに大きな事件に携わるようになった気がします。
「今日はどこへ行くんですか?」
敬語は無用です。島田くん。
「今日は昨日行けなかった場所に行き、その後周辺の監視カメラ巡りです」
「分かりました」
私達は住所のある場所に行きました。
最寄駅で降り、タクシーに乗り換えて東に向かいます。
「紅梨さん、信田さんについて何か分かってんですか?」
「殺人、ということだけが分かってます」
「殺人ですか」
少し会話を交わしていると、タクシーの運転手さんが口を挟んできました。
「お客さん、信田さんについて調べてるの?」
「えぇ」
「それならこの前、私のタクシーに乗っていったよ。なんか忘れ物をして行ったけどね」
「忘れ物、とは?」
「これだよ。ちょっとまってな。」
運転手さんはボールペンを渡してくれました。
「信田さん、どこに行きましたか?」
「お客さんと同じだよ。確か最後は4月30日だ」
私は頷きながら考えました。
罠にハマっている気がしているんですよね。
こんなにうまく連鎖的に証言が聞けるなんて今まで一回もありませんでした。
「ありがとうございます」
私はタクシーを降りると、信田さんが行ったであろう場所にたどり着きました。
「わざわざお時間、ありがとうございます」
「いえ、構いませんよ。私は柳田優華です」
「信田さんについて調べに来ました」
「朝のニュースで見ました。信田さん、すごくいい人でした」
「どのように?」
「考え方が他の人とは違うようです」
「最後にここに来たのはいつですか?」
「4月30日です。この後、どこかの老人ホームに行くとか言ってました。
出ていたのは正午くらいです」
「それって筑紫川老人ホームですか?」
「それですそれです」
「そうですか。ありがとうございました」
私は手帳を仕舞うとお礼を言う。
出ると、先程のタクシーに乗り、運転手さんに訊きます。
「ここに着いた後、筑紫川老人ホームへ行きましたか?」
「えぇ。よくわかったな」
「そこへ行って下さい」
「任せろ!」
運転手さんは車を発信させました。
「安城さん、見当は付いた?」
「えぇ。確信ではないけれど」
ん?
今、安城と言いました?
「あぁ、すいません。紅梨さんでしたね」
「構いませんよ」
島田くん、絶対に仕掛けて来ましたね。
これは少々マズいですね。
島田くんの視線が痛いです・・・・・・。
スマホを出すと、相川さんと連絡を取り、筑紫川老人ホームに来てもらうように言いました。
水無瀬さん達にも来るように言いました。
相川さんに、山田さん、柳田さん、河合さんを連れてくるように指示しました。
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