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≪島田裕志視点≫


朝食を済ませ、安城さん経由で石川さんに連絡を取る。

石川さんは神薙大丘の駅で待っているそうだ。

安城さんは連絡を取り終わると石川さんから頼まれた用事をやりに出掛けていった。

俺、方向音痴です。


「俺、方向音痴なんで、よろしく」

「え、わたくしもです」

「陽菜も無理だよ」

「僕も無理」


靜枝さんがやれやれというように案内する。

運転している人は違うね。

歩いている途中に「感謝しろ」と言われてしまった。

面目ないです。

そういうわけでなんとか、本当になんとか神薙大丘駅に到着する。

途中、1人で独走した人も居ましたが・・・・・・。

安城さんに連絡を取り、場所にWPTで案内してもらう。

近くの喫茶店に入り、奥から2番目のテーブルに行く。


「あ、君達が閑華が言っていた人ですか?」

「あ、そうです」

「立ち話も疲れるだろうし、座ってくださいよ」


全員座ると、石川さんがサングラスを取る。


「ごめんなさいね、わざわざ私のところに来てもらって」

「石川さん・・・・・・でいいですか?」

「その名前で話していると正体がバレかねないから本名、教えておきますね。

 澤井さわい紅梨あかりといいます」

「澤井さん、でいいですか?」

「紅梨でいいですよ」

「年齢はいくつですか?」


陽菜がしれっと訊く。

これは男子勢には訊けないこと。

陽菜が先に訊いてて良かった。

サードラインが訊くところだったよ。

今訊きかけたの、俺は見逃してないからな。


「12歳です。中1ですよ。多分閑華と同じはずです」

「わたくしと同い年ですね」

「あ、そうなんですね」


しばらくはお互いの自己紹介的なことを交わす。


「この前はありがとうございました。わざわざわたくしの学校のことをやらせてしまって」

「いえ、閑華の友人が被害者だったからたまたまね」


水無瀬が本題に入る。

一体この前の勝負心はどこへ行ったのだろう。

ここは大人しくしてるだけか?


「閑華とはどこで会ったの?」

「靜枝さんはやはり気になりますよね。確か・・・・・・摺川瑠南さんの本がきっかけでした」


何処かで聞いたことあるエピソードだな・・・・・・。

あれ、それって・・・・・・。


「俺も同じだな」

「あ、そうなんですね」


俺がその時のことを思い出す。

もう1ヶ月も前になるのか。


「それがきっかけで私の正体を教えました。というのも、

 閑華にお互いにバラされては困る情報を持っていたほうがいいと言ったからです」

「確かに」


天才か?

探偵とは言え俺と同い年だぞ。

その後も雑談を交わして、俺たちは店を出て駅の方へ向かう。


「そう言えばなんで安城さんが紅梨さんの名刺をもってたの?」


俺はふと疑問に思う。


「閑華には、私が行けない場所で動いてもらうために

 世界で数枚の名刺を持たせているんです」


なるほど。

あの名刺、確かに作れなさそう。

直筆のサインが入っている上に透かしみたいなのもあるからね。

万札かな?

街道沿いに歩くと、サイレンを鳴らした警察の車が1台、また1台と通っていく。


「何かあったのでしょうか?」


水無瀬が首をかしげる。

紅梨さんが警察の車を1台止めると、名刺を見せ、事情を訊く。

紅梨さんが一息つくと歩き出す。


「水無瀬さん、いえ、水無瀬探偵。行きましょう」

「どこに?」

「事件らしいです」

「え、マジ?」

「皆さんも是非来て下さい。人数は多いほうが発見が多いので」


そんな理由で事件現場に一般人連れて行く探偵、初めて見た。

事件現場に着くと、水無瀬が名刺を見せる。

水無瀬が事情を説明し、入れることになる

紅梨さんは水無瀬に便乗して、名刺を見せることなく入る。


「・・・・・・相川さん、長崎に来てるんだ」


紅梨さんがスマホを見る。

その姿が安城さんとフラッシュバックしたように見える。

気のせいだろうね。



「信田圭人さん、死因は転落死、おそらく自殺でしょう。

 死亡推定時刻は昨日の22時〜今日の4時。壁と体が擦れた痕跡も鑑識が確認しています」

「相川さん、ありがとうね。非番の時に」

「いや、実家に帰省しただけだ。問題ない」


水無瀬と軽々話すのは相川さん。

この刑事さん、何回も鉢合わせにするな。

偶然とは言え凄いな。

実は偶然じゃないかもしれないけど。


「君達も頑張り給え。探偵になるんだろ?」

「え、あ、まぁ」


突然の話をかけられ、戸惑う幸雄さん。


「一様第一発見者は川田健一さん、同僚だそうだ。

 毎日一緒に通っていて、たまたま通ったら見つけたそうだ」

「なるほど」

「捜査権は水無瀬、そして石川に連絡が取れるなら石川に授ける

 まぁ警察は自殺と処理すると思うがな」


紅梨さんはチラッと相川さんを見た。

その動作は安城さんとそっくりだった。



ホテルに帰ると、安城さんが先に居た。


「お帰りなさい、どうでしたか?」

「事件に遭遇して明日も紅梨さんに会うことになった」


俺が普通に答える。


「そうですか。また仕事が増えそうですね」

「安城さん、紅梨さんの助手かなにかなの?」

「多分雑用みたいなものですよ」


安城さんは苦笑いしながらスマホを出す。



次の日は紅梨さんが夜の間に関係者から話を聞いてきたと言うことで、ホテルで会議を開く。


「この会社は高速道路会社で第4狩梅九州トンネル工事を開始しようとしているとのことです。

 信田圭人さんは工事反対派でした。

 そんな信田圭人さんの友人であり、ライバルな山田浩之さんは

 工事派で会社としてもその方針でした。

 次に筑紫川老人ホームの糶崎由香さんは山田浩之さんとよく会っていたそうです。

 工事計画は5年前から。

 世間に公開されたのは3年前だそうです。

 糶崎由香さんは4年前に老人ホームを立てて追い出されるために

 立ち退き料のを受け取るんです。

 工事費用は2兆9500億円。

 糶崎由香さんは15億円ほど受け取れるそうです。

 老人ホームの話題は新聞でも発行されたそうです。

 他を何件か回りましたが、収穫は殆どなかったです」


紅梨さんは手帳を見ながら言う。

水無瀬はふぅと息を着くと、首を捻る。

そういえば、安城さん、何をしているのだろうか。


「紅梨さん、最終目撃っていつですか?」

「19時頃、会社を出たのが最後です。

 その時間、糶崎由香さん以外アリバイはありませんでした」


俺は水無瀬を見ると、真面目に考える。

ここからは俺の推測だが、おそらく糶崎由香ではないだろう。

おそらく山田浩之さんが工事を阻止しようとしている信田圭人さんを殺害

と言うケースが高いんじゃないかな。

だけど俺にはわからない。

水無瀬や紅梨さんに任せようと思った。




≪To The Next Story...≫

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